鋼の錬金術師 小説

□雨のぬくもり
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「こーにちわー」


ノックも無しにひょっこり現れた金髪の子供。




見るからにやつれて、
薄汚れて貧相な……



「…浮浪者かね、君は」

ロイの呆れ顔にエドワードが顰めっ面になった。

「すみませんねぇ〜。さっき着いたばかりなんで」


久し振りの再会なのに感動もあったもんじゃない。

司令室を見回すとみんな揃っている。
ホークアイが「おかえり」と笑顔で言ってくれた。



「にしても、そんな格好でよく建物の中に入れたな」

「うん。顔パス!………んでも不憫そうな顔されたυ」

だろうなと全員が頷く。
あまりにみすぼらしい…。
いつもの旅行鞄も年季が入り過ぎている様にしか見えない。


「あれ?アルはどうした?」

ハボックがいつも傍らにいるであろう鎧の弟に気付いた。

「…ぇへへ」

苦笑いで返すエドワード。

「あら珍しいわね。ケンカでもしたの?」

「…隣駅に置いて来た。ワンニャンフェスティバルに行きたいって駄々こいてさ」


アルフォンスが無類の猫好きな事は、みんなが良く知っている。

「では、しばらくはイーストシティにいるのかね?」

「報告書を出したら、迎えに行く事にしているから」

今回も長居はしないということだ。

まったく、少しは落ち着いたらどうかとつくづく思う面々にエドワードは気付かない。

「その報告書は?」

手を伸ばすロイにエドワードはバツの悪そうな顔になった。

「…ごめん。まだ出来てない…です」

「何?」

「いや、書いたことは書いたけど…見直ししたら直しがヤバイぐらいあって」

ロイの顔が徐々に険しくなるにつれ、エドワードの語尾も小さくなっていく。

「と…取りあえず、戻って来ましたとの報告に来ましたっ以上!!!」

言うだけ言って、その場を去ろうとした身を翻した。

「待ちなさい。鋼の」

物静かな呼びかけには、恐ろしいぐらいの重圧が込められていてエドワードの足を動かせなくした。

「…はい」

エドワードが窺うような仕草をしたのを確認するとホークアイに向いた。

「中尉、私は上がるが何か急ぎはあるかね?」

「いいえ。今日付けの書類はありませんから大丈夫です」

簡単な引き継ぎと確認を済ませると席を立った。


「宿は取ってないだろうな?」


ロイの言葉にエドワードが目を見開いた。









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