鋼の錬金術師 小説
□甘えんぼvA
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毎日変化を続ける世界
自分もまた
時の流れに逆らう事なく…
過ぎ去る今を
思い起こしはせず
唯ひたすらに
前だけを
見つめて………
じゃないと
後ろを向いた瞬間に
足場もない…
"闇"に
落ちてしまいそうで……
‡‡‡甘えんぼA‡‡‡
《 事 件 遍 》
何故こんな事に……
理由は分かっている。
西方司令部より連絡が入ったから。
西方で管理している国家錬金術師専用の研究所が実験の失敗により崩壊し、研究途中の薬品が気化した為に広範囲に被害が拡大している。
とにかく、死者は出てはいないものの被害は東方まで広がった。
風向きによるものだと言う。
「何故こんな……こんな研究をっ!!」
執務室でロイが嘆く。
「大佐?なんだよ。さっさと着替えろよ」
ドアからエドワードが顔を出した。
「………いい気味だと思っているだろう?」
「はぁ?なに卑屈になってんだよ。あんたらしくない」
ガンを飛ばすロイにエドワードが溜め息を付く。
「まず着替えろよ」
「……言われなくても」
いつも余裕綽々なロイにしたら珍しい態度に苦笑した。
「………ハァ」
ロイの足元には、サイズが合わなくなった軍服が落ちている。
「君より……視界が低いなんて…………」
「はいはい。あんまり握り締めてると服が皺になるぜ。ほら、軍服踏むなよ」
甲斐甲斐しくロイの軍服を拾い上げて、綺麗に畳む。
気持ちが分からないでもないエドワードは、ロイから八つ当たりをされても怒りが沸かないのだ。
何故かといえば、
あの、『焔の錬金術師』と高名なロイ・マスタングが、
『4歳児』になってしまったのだから。
しかも、
漆黒の耳と尻尾と共に。
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