ハガレン不動産 小説
□音
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「おじゃましま〜す」
と元気良く住宅内に入るオレの後ろで、ハボック先輩が固まった。
「今……
声しなかったか?」
んにゃ全然聞こえません
‡‡‡ 音 ‡‡‡
〜 返 事 〜
「マジで声したって」
「じゃぁオレの声に近所の人が間違えて返事したって事に」
「近くからだったぜ」
「先輩………」
オレ、明日から2日間この物件に1人なんだけどさぁ……
「前にいた社員もここで見たって言ってたぜ。え〜と、そうそう向こうの和室で」
今、来ている物件は一応「市」ではあるがかなり外れにある。
築年数15年と比較的新しい方で、使い勝手の良さそうな洋風住宅だ。
何より玄関とホールが広く開放的。
和室と言っても、フローリングに畳を置いただけでアジアンっぽい。
コツコツコツ…
「ん?」
「二階からだな」
「鳥でも歩いてるんじゃねぇの。屋根はトタンだし」
「大将…ホント可愛くねぇなぁ」
「うるせぇ」
ビビらせて面白がってるクセにっ!!
明日からの展示会に合わせてセッティングをする。
オレも、もう勤めて半年になるから物件を預けられるんだ。
半年早いもんだなぁ…
先輩に対して敬語も使わなくなったし。
「さっさと終わらせて、お茶しよーぜ」
いわゆるサボリだ
そーゆー先輩大好きっ!!
勢いよく飛びついたオレを難無く受け止め、プロレスになだれ込む。
仕事も本気・遊びも本気なこの会社に完全にハマった。
「明日から宜しくお願い致しますっ」
セッティングが終わった物件を前にお辞儀をするオレ。
「大将って何でいつもやるんだ?」
オレも分かんねぇ
「願掛け?」
それはある
ハボック先輩は、不思議そうな顔をしていたが、オレも不思議だった。
だって教えられた事じゃねぇし、気付いたらやっていたんだもん。