ハガレン不動産 小説
□空き家
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入社5ヶ月目。
仕事もボチボチ覚えてきたけど、奥が深すぎる不動産業。
今年は宅建とるぞぉ!
と一応意気込んでみせるいるオレ。
‡‡‡空き家‡‡‡
〜忌み土地〜
「エドワード。行ってきてくれ」
いけ好かないマスタング店長からのご指名。
任意売却依頼だ。
「では、後ろからついていきますね」
と初老の男性を外に促した。
別々に行く理由は唯一つ。
近隣聞き込み!
これは重要だ!
車で10分ぐらい。
着いた先は、袋小路の一番突き当たり。
たった7棟の区画整理された場所。
対象物件は山を一部削って造られている為に、他に比べれば2mほど高い位置になる。
他の家を見下ろす感じでやなカンジ。
「まず写真を撮らせていただきますね」
客からの承諾を得て、敷地内に足を踏み込んだ。
うわぁ…最悪…
(-"-;)
敷地いっぱいの茨。
大切な数少ないスーツのズボンに引っかかりまくりだ。
管理していない敷地は背丈が高い(オレより高い)雑草と地面を這うように成長してしまった茨。
長細い土地だな。
奥行きは15mぐらいだが、幅は家が2棟は余裕に建ちそうな長さ。
道路から見て右に住宅があって、左は原っぱ。
ちなみに裏は、雑木林だ。
一番最初に目に入ったのが、白い建物。
分かりやすく言えば、
「公衆トイレ」
何故に?
聞けば、少し離れた所にあるキリスト教の所有物らしい。
なるほど
入れ口らしき所の上に十字架が描かれてある。
敷地の四つ角の写真(境界杭)と住宅の外観写真を撮り終わり、いざ中へ。
そのまんま
……夜逃げの家か?
「娘夫婦が住んでいたんですが、旦那と離婚して今一緒に暮らしているんです。いらないので売却しようかと。仲介でも出していたんですが売れなくて」
と説明してくれた。
この初老の男。
うちの社員の誰よりも背が高い。
見下ろされて気分が悪い。
というより見下していやがる。
人を外見で判断する人間は嫌いだ。
内部も写真撮り、問題は間取りっ!
これが書けなきゃ話にならん。
客の前で書くのは恥ずかしいし、緊張してしまう。
ウザイ…
何故か客がさっきから付いて来る。
信用してないのかもなぁ…
それにしてもつい今まで生活してました的な家だ。
細かい生活用品がそのままで何年も過ぎている。
和風の平家で間取りが歪だ。