鋼の錬金術師 小説

□甘えんぼv
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「開けないのですか?」

「あぁ。鋼のの前で開けようと思ってな」

いたずらっ子のような笑みを零すロイにホークアイも微笑んだ。


「意地悪な方ね」

「たまには礼を言わせてもらいたいからな」


エルリック兄弟は突風のように来ては直ぐに帰ってしまうのだ。

だから満足に礼などしたことがないし、いつもはぐらかされてしまう。


特に兄のエドワードは。


気が優しく、気遣いが上手なアルフォンスが律儀に送って寄越すのかなと思ったのだが、エドワード自身が率先して行動しているようだ。


弟さえ気付かない時もあるらしい。



ひと月前に送られてきた時計。

銀色の大輪のバラ。

現在は執務室にてロイの時間確認に役立っている。

エドワードの趣味ではないだろうに、何故これが送られてきたのか。

しかもロイ指名で。


「そろそろ理由を聞いても良いだろうと思うのだが、中尉はどう思う?」

「大佐に受け止める気持ちがおありなら」

「それは鋼のの努力次第だ」



楽しそうな気持ちを隠そうとしないロイの態度を久しぶりに見たホークアイは、溜まりに溜まっている書類の束を指差した。


「では、先にこの書類を片付けて下さいね。処理されたのを確認したらエドワード君を連れてきますので」

「え…ち、中尉?」

「夕食ぐらい付き合ったらいかがですか?」


此処で話をするより、もっとムードを大切にと言われた気がしたロイは、片手を上げて了解の意を示した。


「食事は、やはり肉系かな」

「野菜系では無いですね。後、デザートが美味しい所が宜しいかと」


空気を入れ換えようとホークアイが窓を開けた。

春先の冷たい空気が、

日溜まりで温くなっていた空気を連れ去って行く。



「良い天気ですね」

「最高の旅日和だな」









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