ハガレン不動産 小説
□残念
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【※店長の話ですので、店長目線で書きます】
エドワードが入社する一年前の話だ。
私は、まだ部長だった。
「マスタング君。ヒューズ君。来たまえ」
自称愛妻家のハクロ店長が薄笑いをしながら呼んだ。
命令は『出張販売』
我が社でいう『出張販売』とは、2年以上契約出来ず、粗利がマイナスな物件を他支店の社員に売らせる為に行う営業応援。
全くの土地勘が無い営業マンの方が先入観に捕らわれることなく、契約に結びやすいという結果が多い。
しかし、ここで契約を上げてもメリットは無し。
あくまで『応援』なので個人の営業ノルマにはならないのである。
いい迷惑な話だ。
だから進んで自分の部下を他支店の為に貸してなどやらないのが普通。
ノルマが達成出来ない営業マンは解雇になるからだ。
しかし、薄笑いを浮かべている上司は私に行けと言う。
解雇になってしまえと言わんばかりに。
そんなに嫌われてるのか………
(-_-;)
あからさま過ぎて情けなくなる。
「どうするロイ?車は別々に行くか?」
「その方が動きやすいだろう。荷物も多いしな」
同期のヒューズとは長い付き合いになっている。
今回のような、馬鹿げた命令の時ほどヒューズと一緒で良かった。
「にしてもハクロのおっさん、一週間もオレ達を飛ばすとはな」
「一週間休暇を貰ったもんだと思って羽をのばそうか?」
「いいねぇ〜ソレ」
私とヒューズの『出張販売』=『息抜き』が始まった。
無論。
解雇になどならない自信がある。
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