ハガレン不動産 小説
□曰く付き
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明け渡しが難航した場合、殆どが強制執行手続きをして断行になる。
店長が持ち出したノートも断行直前まで至ってしまった物件だった。
「詩や梵字・曼荼羅が鉛筆で殴り書きされてて、見るからに気持ち悪かったが…気になってな」
ヒューズからは止めろと言われたが、3冊持ち帰ってしまったらしい。
ノートの表紙にナンバーが書かれていたから、ちょうど64冊目から。
「さすがに自室に持ち込みたくないから、会社に置きっぱなしにしていたさ」
そして空き時間に読んでいた。
「精神世界というのかな。魂とか神とか。これが精神異常者の心の内なんだろうと思ったよ」
3冊目に入った時、半分は未使用なことに気付いた。
そしてまた3冊目が酷い。
グロテスクな絵ばかり。
腸を使って顔を表現してみせたり、全身血塗れの皮を剥がれた赤ちゃんだったり…
てんちょー…
完璧、食欲失せました。
「最後から1ぺージ目が糊でくっつけられて見られなくて、最後にノート一面に『殺』と赤い何かで書いてあった」
ザワッと背中が寒くなった。
「それからだったとヒューズが言っていた。私の目が虚ろになってきたのは。悪いが私には覚えがなくてね」
そして、車に跳ねられた。
見通しがいい道路で。
打撲と捻挫ぐらいで検査入院を一週間して、出勤したらヒューズがノートを燃やして無くなっていた。
「糊でくっつけられていたページは?」
ハボック先輩の言葉に申し訳なさそうな顔をした。
「書いてあったそうだよ。一言な」
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