創竜伝 小説
□お兄ちゃんだから。
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「ただいまぁ…」
小さな小さな声で帰宅。
時間は深夜3時。
こんな夜更けなのだから、あえて言わなくていいだろう挨拶は、礼儀とかの意味ではなく習慣からくるものだから仕方ない。
極力静かに、物音立てずに動くことに慣れてきたのはごく最近で。
兄からは、『門限2時』ときつく言われてるから尚更今日は慎重だ。
それでも、やはり気の弱さか、書斎から漏れる明かりに心臓がビクつく。
まったく、これじゃあ終君と大差ないな…
とプチ反省しながら、家長に会う為に書斎を開けた。
「兄さん…?」
居るはずの主が不在の書斎は、机とソファーに読みかけの本が散乱してあり、ちょっとだけ留守をしているかのような雰囲気だ。
地下にでも資料を取りに行ったのかな?
でも、こんな時間に?
いくら活字中毒者でも、人間の三大欲求には勝てないだろう。
地下で寝てるかもしれない。
行こうかな…
あっ…
でも、この格好ではバレますね…
確認する前に、パジャマに着替えようと二階に上がった。
なるべく、階段が軋まないように、そっと足を進めているが別の音が助けてくれた。
―なんて、本人に言ったらお金を請求されそうですね。
「……元気ですねぇ」
廊下にまで三男坊の元気な鼾が響く。
その鼾に誘われながら中に入ると、案の定、芸術的なポーズの三男が出迎えた。
いっそのこと…
落ちれば楽なのに…
仰向けで、右足だけをベッドの上に置き去りにして、後は全部布団と一緒に落ちてる格好…。
絶妙なバランス感覚で保たれているポーズだが、かなり無意味だと思う。
はぁ…
手のかかる弟の姿に、溜め息しか出ない。
ふわっと、アルコール臭が漂う。
Σうわぁ!?
その息がやけに強い臭いに今更気付いた。
もしかして、ぼくかなり臭ってる!?
こんなに深酒したあげく門限を破ったなんて兄さんにバレたら……
本気で冷や汗が背中を伝う。
いつも、叱られたりお仕置きされたりするのは終君であり、ぼくがされたことはただ一言注意を受けるだけで…。
しかも実際のところ、終に対してのお仕置き(食事制限)などは率先して続が立案している。
うーん……
自分にどんなお仕置きがされるのか想像できず、ただ唸るしかない。
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