創竜伝 小説

□お兄ちゃんだから。
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そもそも、説教を受けるのだろうか?


ぼく、もう19ですし…


遊びではなく、バイトで遅くなったのだから、多目にみてくれるはず。



「…なんて、自問自答しても意味がありませんし…」



アルコールが回っていると自覚している為、考えても無意味だと諦めた。


今更焦っても仕方がない……



ので、最優先課題として終を在るべき姿に戻した。



「まったく、終君も兄さんも似たようなものですね」



ベッドの上や下に乱雑に散らかっている漫画本。


夢の世界に旅立つ瞬間まで読んでいたのだろう。


それらを拾い上げて、纏めて机に置いた。


「おや?宿題…かな?」



広げられた数学の問題集には、付箋紙が貼られ明日の日付とページ数が記されていた。



数式が途切れてる……



あきらかに、宿題を途中で止めたようだ。



「はぁ。こんなだらしない子に育てた覚えはないんですが……」



おもむろに問題集の真ん中に収まっているシャープペンを持ち、解答欄を埋めていく。


「う〜ん…やっぱり今日は呑みすぎましたね。この程度の計算が……」



半分落ちかけている瞼を懸命に瞬かせて、計算に打ち込む。



べつに弟の勉強を手伝ってやろうとかではない。

ただ純粋に自分の基礎力を試したいだけの続は、次々と問題を解いていく。





カタンッ




「ん?」


余君?



まさか、また夢遊病!?




ほぼ出来上がった問題集を投げ出し、急いで3階の屋根裏部屋に向かった。



バタンと音が響くのと同時に、不躾に部屋に入る。



「余君?」



真っ直ぐに、部屋の奥にあるベッドに行く。


天使の見習い中らしい可愛い弟が寝ているはずだが、



いない!


何処に!?




努めて冷静になろうとするが、多量のアルコールが理性の邪魔をする。




「つ……づく…にぃさん…?」

「余君!!」




幼いアルト声がした方を向くと、ドアの影に座り込んでこちらを見ている末弟がいた。



完璧に寝惚けているのか、ふにゃりと微笑んでいる顔に続が脱力する。



「ぉかえりさなぁ〜い」

「た…だいま。余君……そこで何をしてるんですか?」

「―っん〜とねぇ」



冷たい床の上に座り込んで、頭を前後左右に揺らす姿はまだまだ幼い子供だ。


半分は夢の世界かな?




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