創竜伝 小説
□雪のひとひら
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池の水面に雪が落ち、すうっと姿を消した。
チラチラと舞い落ちる雪。
うっすらと庭園を白く染める。
「本当にいいのか?」
「はい。望むがままに」
寒さを感じないのか、それともそこまで構ってられない状況なのか、薄着の青年二人が池の前に向かい合って立っていた。
その表情は、両極端に違い、背の低い方は労るような柔らかい微笑を称えているのに、背の高い方は耐え難い思いに苦渋を滲ませている。
「……すまない」
「何を謝るのです。僕は兄さんの手で死ねるなら本望です」
柔らかそうな栗毛の髪にも雪が降り積もる。
穏やかに微笑む姿は、マリア様に似て慈悲深い。
「続…」
「兄さん」
「全てが…全てが終わったら俺も直ぐに逝くから」
「終君と余君にちゃんと話してくださいね。分かってくれるはずです」
「あぁ」
温度のない宇宙のような闇夜色の目と、
純度の高い蜂蜜のような色の目が
見つめ合う。
そして、
逞しい大きな両手で
細い華奢な白い首を
優しく包み込み………
「また会おう」
「はい。兄さん…」
蜂蜜色の目が瞼を閉じた。
「続兄貴っ!!!始兄貴ー!!!」
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