BL
□逢いたくて
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俺は、電車に乗っていた。
この時期は、18時でも暗く、家や車や街頭の灯りで 流れて行く景色はとても綺麗だった。
少し季節外れのイルミネーション。
真っ直ぐ立った木に青い電飾が付けられていた。
澄んだ青。
アイツを思い出す。
直ぐにその青は流れて行った。
帰宅ラッシュじゃない電車はとても眠くなる。
満員電車の様に気を張る必要も無いし、電車の揺れが気持ちいい。
アイツが頭から離れてくれない。
澄んだ青。
透けてしまいそうな白。
突然現れて、突然いなくなってしまったヒト。
白銀
あれから、どのくらい経つのだろう…霧葉卒業して、もう俺 大学生だよ。
賢吾も綾も、違う学校になって
あの日々を思い出す材料は俺の近くに無いはずなのに。
俺からお前が出て行かない。
忘れたいわけじゃない。
けど、思い出すたび、哀しくなる。
白銀……─
優しく響く甘い声で愛を言ってくれた。
俺は、その時 本当の愛がわからなくて、なんだか恥ずかしくて、突き放したときもあったけど。
俺から愛を言うことは無かった。
それでもいいと、言ってくれた。
俺は甘えてた。
ずっと、傍に居ると思ってた。
「白銀」
電車に乗っている人が、少なくなってきた。
座席が空いた。
俺は、一番端っこに座った。
この車両に10人乗っているか、否か。
ゆっくり動き出す電車。
眠い。本当に。
瞬きしたら、組んでいた腕に何か落ちた。
続いて、ぱたぱたと落ちていく。
頬を伝って、顎に雫が出来た。
「は……俺、泣いてる…」
思い出しては悲しくなるなんて。
白銀との思い出が悲しいものになっていくのは嫌だ。
「しろ…っが……ね」
逢いたい
「しろっ…がね」
逢いたい
「しろがね…」
逢いたい
白銀…何処にいるの…─?
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