ツナヒバ

□一緒に来てくれますか
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大雨が降り続く中
屋上で二人
灰色の空を見上げていた。

「恭弥・・・風邪引いちゃいます・・・」

自分はどうなろうが別に構わないが
最愛の彼が体調を崩すなんてことがあったら大変だ。

「・・・」

それでもこっちには見向きもせず
ただただ虚ろな目で空を見上げる彼の姿をみると、
もう、一生俺は貴方の笑顔なんて見れないんだろうな
そう思うしかなかった。
だって


「酷い・・・綱吉は酷いよ」


さっきまで幸せそうに笑っていた彼の笑顔を奪ったのはこの、俺なんだから。


「どこにも行かない、死ぬまで一緒だって言
ったじゃない」


確かに言った。
俺もそうしたかった。

だけど俺は


「貴方を連れてなんか行けない。」


ぐしょりと濡れた彼の体を抱き締める
残酷な言葉をはきながら。


「いゃ・・・イヤ!置いて行くなんて、そんなの許さない!」


俺の腕の中で暴れ回る
しかし華奢な体の抵抗は無意味で。
いつのまにか身長も俺は追いついてしまい。
たった8年でこんなに変わるものなのかと

そして恭弥と過ごした時間が走馬灯のように頭に流れ込んでくる。

彼は泣きわめき雨と涙が混ざり合い
とても悲しい顔で俺を見上げる。


俺は泣かない
そう決めていたのに
彼の顔を見た瞬間目から液体が溢れ出た。


「日本に・・・残ってください」


そしてまた俺は残酷な言葉を吐いた。

俺はボンゴレ十代目
雲雀恭弥という人間を愛してから
ずっとこの日がいつか来ることを知っていた。
そして恐れていた。
昨日リボーンという男からそのずっと恐れていた日が来たことを告げられて死にたいくらい悲しくなった。

分かっていたのに、俺は彼を愛しすぎた。
後戻り出来なくなっていく所まで深く。


「ゃだ・・・僕も行く、連れて行ってよ、お願い」


一人にしないで。

そう泣き顔で訴えてくる。
嗚呼、もう泣かないで

いっそのこと彼と駆け落ちでもしようか、
なんて出来るはずも無い考えが次々と浮かぶ。


「貴方を危険に晒すなんて俺にはできない。」

「危険なんて知らない!
そんな事で別れろって言うの?
ふざけないでよ!」

「俺について来るって事は死にに行くようなものなんです。
貴方には・・・普通に幸せになってほしい。」


ごめんなさい
ごめんなさい恭弥。

俺が貴方を愛しすぎたのと同じ様に
貴方が俺に侵食している事も
二人で過ごした時間が幸せすぎた事も

全部知っているのに

背中に走る爪が突き刺さる痛みも
胸で泣きじゃくる彼の体温も
何もかも置いていくのか。


「酷いね、綱吉は残酷すぎるよ。」

「知ってます、俺は最低な人間だ。」

「僕は君と死ねるならどうなろうが良かったよ。
だけどそれさえやらせてくれないんだね。
一人で死ぬ気なんだ。
今まで君と過ごした時間は一体なんだったのかな。
もう、何が幸せだったのかわからない・・・よ」


色んな想いを吐いて俺から離れたかと思うと
冷たく濡れた床に倒れこんでしまった。
危ない、反射的に動いた体でなんとか頭は守る。
そのまま押し倒したような状態でまたきつく抱き締めた。


「・・・ねぇ、キス・・・してよ」


涙が溢れ出ているのに
幸せだったころと同じ笑みを浮かべて見上げる彼に
またすごく悲しくなって。

俺も溢れ出る涙を無視して必死に笑顔を作った。

そして何回も甘いキスを落とす。
もう二度と味わえないかもしれないその味を噛み締めて。


「嗚呼、やっぱり僕ね、


すごく、すごく幸せだったよ。」


「俺も・・・もう二度と無いぐらい幸せでした」


幸せな時間に落ちていく程
辛く冷たい別れがおとずれる
知っていたのに突き放せなかった愚かな人間。


でも分かっていて幸せだと思えたのは



貴方を愛していたからでした。
(一緒に来てくれますか)(そう言えたなら・・・)(さよならなんて言いたくなかった)






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8年後ぐらいのツナヒバ。
自分だけの物にしたいぐらいに愛しているけれど、ボンゴレの血を引き継いだが故に、いつか別れが訪れる。
それを知りながらも、雲雀を最後の日まで愛し続けた綱吉。
そして綱吉を純粋に愛し続けていた雲雀。
そんな感じで書きました。




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