ツナヒバ

□古城の孤独なヴァンパイア
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「誰か住んでるのかな・・・」


俺は一人古城の前にたたずんでいた。
とても人が住んでいる雰囲気はない


「でももう入ってみるしか・・・」


もう倒れそうだ。
意識を失う前に最後の希望に頼ろう。

ベルを鳴らそうと思ったがどこにも無い。
ドアの取っ手に手をかけるとギシギシ、っと鈍い音が鳴る。


「カギかかってない・・・」


ますます誰か住んでいるのか不安になってきた。
おそるおそるドアを開ける。


「あの、誰かいますか・・・?」


中はシーンと静まり返っている。

赤い絨毯が敷いてあり
色んな絵画が飾られている。
まるでこの中は時が止まっているかのようだった。


「・・・やっぱり誰もいない」


薄暗くて足元が見えない。

はっきりいってこんなとこに城があるだけでもおかしいのに人が住んでいるなんてありえないだろう。


「どうしよう」


俺死ぬしかないのかな。
そう思うとどんどん傷口が広がっていくような気がして激痛が走る。


扉がたくさんある。
その中にひとつ、赤い扉があった。
何故かその扉に俺は引きつけられて。


「入ってみようかな」


何故かそう思ってしまう。

どうせ人なんて居ないんだし不法侵入じゃないよね、
死ぬならベットの上が良いし。
冷静にそう思いながらボロボロな足を引きずって、動かないはずの体を無理やり動かす。




ガチャッ




「え、」

自分の口から気の抜けた声が漏れる。


「人・・・いた・・・」


純白のベットに一人の少年が、死んだように眠っていた。


「・・・というか・・・死んでないよな」



どうしてだろう、何故か彼から目が離せなくなって。

俺はおそるおそる全く動かず胸の上で手を組んで眠る彼に近づいて行った。




        
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