ツナヒバ

□古城の孤独なヴァンパイア
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・・・そして今。




俺は目の前で眠る彼に見入っていた。

真っ白な肌、整った顔。

そう、すごく、


「綺麗だ・・・」


思わず口に出してしまうほどに。

少しも動かない彼を見て、死んでしまっているのか、とか思いながらも、
その青白い肌に触れてみたくなった。


おそるおそる手を伸ばす







その時





パチリ。




「!!」


思わず伸ばしていた手を引っ込める。
まさか、起きるなんて。

数回瞬きを繰り返し、俺の方にゆっくりとした動きで顔を向けてくる。


「・・・誰、貴方。」


切れ長の目に見つめられて、動けなくなった。


「あの、えっと・・・」


瞳はきれいな赤で、まるで宝石の様。
ぷくりと膨らんだ深紅の唇。
さらさらとしていそうな頬。

そのすべてに魅了され、頭が一瞬にしてフリーズした。
何と言えばいいのか。


「血の匂いがする」

「へ」

「ねぇ、血だらけだよ」

「あ」


まぬけな声が漏れてしまった。

あぁそうだ、俺もう死にそうだったんだ・・・
そう思うと急に意識が・・・




バタリ。



たぶん俺、もう死ぬんだ。
最後に綺麗な顔が拝めて良かった。


なんて想いながら馬鹿な俺はその場に倒れた。








  
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