ツナヒバ

□卑怯、なんて最高の褒め言葉
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卑怯だ、って、言ってください。




ボンゴレの超直感なんて物は、つくづく嫌になることがある。
教えてくれなくても良い事まで、知らせるんだ。




例えば、死の宣告とか。



「ねえ雲雀さん、泣かないでください」


言わなきゃ良かった、と思った。



もうすぐ死ぬかもしれない、だなんて。



彼がこんなに涙を流すのを見るのは、多分、これが初めてだ。


「君は、卑怯、だよ」

「そうです、俺は卑怯です」


認めますから泣き止んでください、
そう言いながら何度もキスを送った。
でも彼の涙が止まる事はなかった。


「僕を鎖で縛り付けているくせに、僕を置いて死ぬ気?そんなの、許さな、いよ」


もう一人にはなりたくないよ。


そう言いながら抱き付いてくる彼をきつく抱き締めた。

もう、この体温も味わえないかもしれないから。


「俺は貴方を一人になんてしません。」


彼を抱き締めたまま耳元に囁けば、肩が微かに震えるのが分かる。顔も真っ赤に染めていて。

・・・可愛い、なんて言ったら今ここで死ぬかもしれない。


「やっぱり君は卑怯だよ」

「最後まで僕に優しくするの?」

「守れもしない約束なんかして。」


「貴方は優しくするほど泣くんですね」


だから俺は貴方に優しくするんですよ。


「んっ…」


頬に伝わる涙を舌で舐め取った。
甘い声を出す彼を見て理性が崩れないように何とか耐える。


「俺だけの前で、泣いてください」


貴方の涙は、俺だけの物。

しょっぱいはずなのにすごく甘いこの液体は、俺の物。

だから、枯れてしまうぐらいに泣いてください。

優しくするから。




「ねぇ、雲雀さん。もっと貴方を味あわせてください」

「・・・好きにしなよ」



甘い言葉なんていらないよ。
いくらでも卑怯だって言ってくれて良いから、
だから、せめて今だけは、貪るような甘いキスを。




(卑怯、なんて最高の褒め言葉)

たとえそれが、愛おしい人と過ごす最後の夜に言われた言葉だとしても。


  








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初めて「懲りずに貴方に愛を」様より企画参加した時の小説。

俺様なお題で甘めのお話がテーマな企画だったんですが、まったくお題に合ってない気が。





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