-Novel-

□馬鳥プロミス
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 靡く毛並み
 輝く角
全てを見抜く瞳

そして全てを包み込むような

大きな翼、



「あ、大変!」

一頭が口にする。

「え?何が?」

もう一頭が聞き返す。


「返さなくっちゃ、アレ」


「アレ?」


「うん、こんなに汚い星にも、まだ綺麗なモノがあったのよ。私、見つけたの。」

「こんな世界汚れた世界に、綺麗なモノなんかないだろうに」

「あったのよ、私ときめいたもの」

「まぁ、この星も、もう長くないだろう。
空気も汚ければ、草木も枯れる。最悪な星さ、行くなら早く行け、待っててやるから。」


「ええ、」


「お前、その姿で会いに行く気か?」


「まさか、ちゃんと驚かせない格好するから、」

そう言って、
崖から飛び降りた。





「よいしょ、と。」

足元に白い羽がひらひら落ちる。

これなら、驚かれないわ。

片手に持ったのは、青い傘。

頭上には大きな満月。

数日前、大雨が降った、その時私は傘なんか持ってなくて(当たり前だけど)ずぶ濡れだった。私の銀色の髪が、雨に濡れてキラキラ光る。着ていたワンピースが段々と雨を吸収していく。
大雨に呆然としてただ立ち尽くしていた、そんな時だった。

「おい、そこの、」

「?」
ワケあって言葉は発せ無かったけど、
そこにいた男の子は話を続ける。

「びしょ濡れじゃねーか、傘、持ってないのか?」

私は大きく頷いた。

「・・・ほら、」

その男の子は、自分がさしていた青い傘を私に差し出したのだ。

「いいから、オレん家ここから近いから、この傘貸してやる。」

そういって、私に押し付けた。


驚いた、だって私に傘を貸したら、貴方は濡れてしまうのに。
きゅ、っと胸が締まって温かい気分になった。

「じゃあな、今度会ったら返してくれればいいから。それが約束。」


男の子は走って行ってしまった。


今度、会ったとき。

きっと、もう会えないのだけど・・・
「私、人間じゃないの。」なんて言えないし・・・。

でも、この星から帰る時になって、どうしてももう一度会いたいと思った。
だって、約束、したものね。


トントン、
小窓を叩く。
窓越しに見えるのは、眠っている男の子の姿。


トントン
「う、ん、なんだよー、こんな時間に、」
のそのそと窓をみつめる。

「あ、お前はこの前の・・・
 でも何で此処って分かったんだ?
今、玄関開けるから。」


良かった、どうやら起きてドアをあけてくれるらしい。


ガチャリ、
「どーした?なんで此処ってわかったんだ?そういえばお前って何か変わってるよな、その髪とか目とか」

「はい、これ、約束の傘。」
私は彼の言葉を遮って、持っていた傘を渡す。勿論質問には答えずに。

「お、おー。でも、わざわざ持ってくるか普通。」

彼は笑う。


「私ね、ほんとは、
「あ!そうだそうだ!」

今度は私の言葉が遮られた。


「ほらよ、」

手渡されたのは、ピンクの傘。

「それ、姉貴の傘。女が青い傘なんか嫌だったかなーって思って。そっち貸してやる。」


きっと私の今の顔はすごく間抜けだろう。

「えっと、あ、あの私、引っ越すの。だから、きっともう会えないわよ?」

彼は一瞬驚いて、また笑った。

「じゃあ尚更だな、今度会ったら、いや、また会えたら返してくれればいいから、それ、


「「約束」」

私の言葉と、彼の言葉が重なった。

「約束ね、わかってる。また、きっと、きっと会いに来るから!」


「おう!」


私はピンクの傘を持って、後ろに一歩下がった。

「気をつけて帰れよー」


「うん!」

私は思いっきり走った。



この世界は汚い。
でも、すっごく綺麗なモノもあったみたい。

その心が何よりも、美しく思えた。
心って美しいと心底思った。


この世界に遊びにきて良かった。


人間って羨ましいって思った。


必ず、約束守るからね。


私は月に向かって大きくジャンプした

 同時に白い羽が、舞う。

口にはしっかりピンクの傘をくわえて。
 私は飛んだ、空高く。

 私に名前は無いけれど、人々は私をこう呼ぶの。

「嗚呼、美しきその角、おおきな翼、麗しのペガサスよ、」
と。








馬鳥プロミス
(随分遅かったな、なんだ?そのピンクの)(これ?コレは約束の印よ。)




*あとがき*
ペガサスの地球旅行。
私もあってみたいー。

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