-Novel-

□異異夢を、
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僕は今電車に乗っている。


心地よい揺れに、眠気が襲ってきた。
僕は目をつむって、顔を伏せた。
会社帰りで疲れていたのだが、今日は割と早く帰れるようで嬉しい、しかも夕日がみえる時間だ。




ゴゴッ



地面が揺れる音が耳に入る。




ゴゴッ



僕は伏せていた顔をあげて電車の窓の外をみた。



そこには、沢山の建物が成長している光景が映し出されていた。

ビルがまるで木々の急成長の如くグングン空に向かって伸びて行く。


ゴゴッゴゴッ


少しずつ少しずつ背を伸ばして、やがて雲の上まで伸びていった。


僕はただ呆然としていた。
そして車内を見渡す。
そこに人は誰ひとり居なくなって僕だけになっていた。


僕は降り損ねたのだろうか。



すると電車は急に止まり、逆走を始めた。



今度は、建っていたビルや家や店(全て雲の上だけれど)が凄い早さで崩れて行く。


ガラガラガラガラ…ガラガラガラガラ…


地面はたちまちビルや家、店の看板などで埋め尽くされて海のようになだれている。


僕の乗っていた電車もビルの破片に飲まれて行くのだった。

僕はひたすら助けを求めるが、誰もいない車内に響き、声さえも飲まれて行く。



(はっ…)



僕は目覚める。
今は電車の中のようだ。
ではあれは夢だったのだろうか、兎に角現実世界に戻れて安心した。



その時だ、
周りを見れば人々は消えていた。

僕は慌てて立ち上がって窓の外をみた。



ゴゴッゴゴッ



建物が成長しているではないか。


まるで先ほどの夢と同じ光景に僕は何度も目を疑った。


と、ここまでくれば次は電車が逆走して建物が崩れ落ちてくるはずだ、と瞬時に悟って僕は脱出を試みる。


しかし、電車は止まりそれから動かなくなってしまったのだ。


(夢とは違う)
そう感じて、僕はその場にしゃがみこんだ。

すると電車がなにやら奇妙な音を立て始めた。

キィ、キィ、ギガガガガ、

電車の下から聞こえるこの音は、なんと電車のレールから聞こえるものだった。
レールがドンドン斜め上をめがけて、形を変えて行く。
まるで、空を目指すように斜めに。
電車は傾きレールに比例する。
僕は鉄の棒にしがみつきながら、ただ脅えていた。

ガコン!

と、大きな音を立てて電車は走り出した。
僕は窓の外のゆっくり覗く。

(嘘だろう・・・)


レールが空に向かって、どこまでも伸びているではないか。
電車は突然走り出した。レールに沿って空に向かって。

僕は怖くなって、ドアをおもいっきり蹴飛ばした。

ガラリ、

ドアはあっさりと開き、僕は車内から落っこちた。ガラガラと崩れゆく建物を背景に、落っこちた。
意識はもう無かった。


(はっ!)


僕は目を開ける。


ここは、


車内だ。



ドアをみれば開いている。


今のも夢だったのか。
夢の中の夢だったのか。
今も夢なのか。




ドアに歩み寄り、外に出る。


(うっ・・・!)


そこに広がっていたのは、


宇宙空間。



息が出来ない。



果たしてこれは、、、










異異夢を、
(夢の中の夢で夢の中の僕が夢の中で、)







*あとがき*
無限の、ループ。
最初から夢だったのかもね。全部。

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