-Novel-

□蒼い瞳のカンパニューラ
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とうとう夜になり、ボクはリュックに懐中電灯を詰めたりしていた。
絶対暗くて足元が不安定だろうな、と思って。


眠気は無い。


学校から帰って速攻で寝て、寝溜めをしておいた。

外は暗く 山が近いこの辺りはよく星が見える。
今日は晴れたから一層星が輝き、瞬く。

ボクは宝石屋の赤い布の上のケースに入った宝石を眺めるより、空に敷いてある紺色で深みのある黒いカーテンに無数に散らばり、それぞれ違う輝き方をする星をただボーっと眺める方がずっと好きだ。


そんなこんなでもうすぐ約束の時間だ。
親はもう寝たから窓から脱出を試みた。




案外すんなり家から抜け出して、
早足で森まで向かう。
気がつけば森まで向かう一本道を、全力で走っていた。



ところが、
約束の時間になっても友人は来ない。
ドタキャンか?
それともぐっすり夢の中か?
まぁあいつは裏切ったりする奴じゃない。
友人の家もこの辺りだから、ちょっと覗いてやろうと友人の家まで足を進める。

小窓から覗けば、丁度食卓のテーブルが見えた。
よく見れば、片手にコーヒーカップを持ってテーブルに伏せてる友人の姿がうっすら見える。


「起きてられなかったな、 あいつ・・・」


昼間の自信はどこに行ったやら。
のんきにいびきなんかかいて豪華に寝てるではないか。


呆れて起こす気にもなれず、
ボクは決心した。



  一人で森の中に入ろう


懐中電灯を取り出して森の中へダイブした。





足元を照らす光はまるで命綱。
真っ暗で周りが見えない。
時々飛んでくる蝙蝠にビクビクしながら足早に進む。
猫の村だか何だか知らないけど、本当に化け物なんかいるのかこの目で確かめてみたい―

そんな事を考えていたら、
懐中電灯の光が異様な物を見せ付けた。



何かがいる



と、 いうか落ちている。


ボクは目を細めて、懐中電灯でその物体に光をあてる。
足は少しすくんでいる、ついでに手にも冷や汗をかいている、得体の知れない物体を目にした今のボクの心臓は、フル活動のフル回転 心臓が踊ってる。

得体の知れない物体は動いた。
のそのそと何かに怯えるように・・・


「あ…」



その得体の知れない物体とバッチリ目があった。

そこにいたのは、
蒼い瞳の



「き…きつね?」



割と小さめのきつねがこちらの様子をうかがいながら怯えている。


ボクは懐中電灯をきつねの足を照らした。


「お前、怪我してるのか?」



枝で思い切り擦ったような切り傷が目に飛び込んできた。

この傷のせいできっと動けないのだろう。


何だか放っておけなくて、
リュックの中を漁った。
すると出て来た包帯と絆創膏 。
一週間前のキャンプに行ったとき持って行った事を思い出した。
非常にラッキーだ。

ボクはゆっくりと近づいて、細い足にそっと触れた。
きつねは警戒しながらも、じっとしたまま動かない。

「これ、巻いておけば少しは歩きやすいと思うんだ。だ、大丈夫、大丈夫、ボクは君に何も悪いことはしないから、安心して、ほしいな・・・」

なんだかこっちまで緊張して、段々弱気になってくる。
なんたってきつねに触れることなんて初めてだし、なんだか怖がられてるし・・・

ブツブツと独り言を言いながらも、なんとか包帯を巻きつけてやることに成功してホッとして肩をなでおろした。

きつねは、おずおずと足を見つめたり動かしたりと不思議がっている。

ボクはゆっくり立ち上がって、
「もう大丈夫だから、仲間のところへ戻った方がいいよ。」
と、なるべく小さく優しく囁いてやった。

きつねはスッと立ち上がって、また蒼い瞳でボクをみつめた。
なんだかお礼を言われている気分になって、ちょっぴり照れた。

そのままきつねは走って、暗闇の森に溶け込んでいった。

ボクは安心して、懐中電灯を手にとって歩き出そうとした、
が、しかし、足元が急に暗くなった。
「おかしいな、電源はオンにしたはず・・・」

嗚呼、一難去ってまた一難とは正にこの状況だ。
足元が真っ暗というか、お先が真っ暗になってしまった。

「懐中電灯の電池が切れたぁ・・・」
ボクの発した言葉は、暗い森に飲み込まれていった。

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