宝物部屋

□君を俺だけのモノにする為に
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「痛…っ!やだ、黒様離して…!!」


そして無理矢理引き摺られ連れて来られたのは見慣れた黒鋼の部屋。
逃げないように目一杯力を込めて掴まれた腕の先は血が通っていないのだろう、力無く垂れ下がるばかりだ。
寝室の扉を開けベッドに押し倒されれば真上には人を射殺せそうな程に鋭い眼光。


「離して…またアイツの所にでも行く気か?」


「違う…!!」


アイツとは星史郎のことだろう。
何かと仲が良くない黒鋼と星史郎は特にファイを挟むと熱した油の中に水を入れる以上に危険だ。
星史郎は何かにつけてファイをからかい楽しんでいる節があり、それもなかなか本気らしい。
そんな中、誰もいない放課後の保健室で二人きり。
しかも星史郎は扉に背を向けていたため黒鋼から見れば二人は抱き合い口付けを交わしていたように見えただろう。
黒鋼は怒りの余りファイの言い分すら聞く様子はない。


「抵抗もしないでキスされて…満更でもねえんだろ?」


「そんな…!」


黒鋼の言葉に愕然とした。
こんなにも心の中は黒鋼でいっぱいなのに。
そんなに自分は信用されていなかったのかと胸が締め付けられる思いだった。
ファイの表情の変化に鋭い黒鋼も今日ばかりは目の前が憤怒で赤く染まっているかのようで気付く気配もない。
今の黒鋼に反抗してしまえば本当にどんな目に合わされるかわかったものではない。
自分の恋人が恐ろしくて何も言えず黙り込んでしまう。
そんな態度が浮気を肯定しているかのようで黒鋼は益々苛立つ。
悪循環だ。


「…二度と浮気出来ないようにしてやる」


地を這うような低い声にファイが肩を震わせる。
黒鋼は一度ファイを離すと寝室から出て行ってしまった。
痛む腕を擦りながらもファイはベッドに押し倒された体勢のままでいる。
これが解放ではなく、お仕置きの始まりなのだと理解している。
逃げれば其れ以上の報復が待っている。


「黒たん…」


震える指を握り込みながらそっと名前を紡ぐ。
ファイが恐れるのは黒鋼そのものではなく黒鋼に嫌われること、愛想を尽かされること。
黒鋼がお仕置きにより満足するのなら、別れるなんて言わないのであればどんな仕打ちも耐えるつもりだった。


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