多ジャンル小説置き場

□いつもより優しい彼も好き。
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「……うぇ」
「……またかよ。そろそろ慣れたら?」
「無理……無理……」

仲間とはいえ、やっぱり人の肉片とかを見ると吐き気がする。
こんな場面を何度見ただろうか。
そのなかで、一度で死んでしまう人もいるし、私の隣にいる西くんみたいに生き残る人もいる。
私も一応その一人だけど、情けないことに年下の西くんに助けられてばかりなのだ。
ほとんど、殺されそうになった瞬間に西くんが標的を倒す。
つまり、囮みたいな。
もちろん、今日も西くんの一人勝ち。
Xガンなんて、私が持てばただの飾りだ。

「早く部屋に行きたい……」

呟いた瞬間、お腹あたりから自分が消えていく。
西くんも同じで、部屋に行くのを待つだけ。
一瞬だけ肉片と化した人達を見て、ぎゅっと目をつむる。
切ないと思う半面、気持ち悪いと思ってしまう。
次に目を開いたときには、やっぱり私と西くんしかいないあの部屋の中。
真ん中には黒い球。
そこに流れるメッセージには、私の名前と0点という文字。
『西くんに守られすぎ』
って、仕方ないもん。

「……少ねぇ。5点かよ」
「っていっても、トータル60点越えじゃないですか……」
「お前は相変わらず0点だな」

普通の人はこうだよ。
ちょっと運が良かったら点数が入るだけ。
何回もやってる私なのに0点だもん。
逃げちゃうよ。

「……私、死ぬのが嫌だって思ってたけど……死んでこんなことになった今ならどっちがいいのか分かんなくなっちゃった」

死ぬのが嫌だって思ったとき。
死んで、たくさんの人が殺されるのを見るとき。
時々、幻想なんじゃないかと思う。
私の夢じゃないかって。

「……帰る」
「……ん。ばいばい」

またね、なんて言いたくない。
会うときは、またあの恐ろしい光景に立たされるときだから。
西くんが先にドアを抜ける。
静かな空間が気持ち悪くて、またあの場面を思い出しそうで、西くんがいる間に着替えれば良かった、と思いながらガンツスーツの上に服を着て出た。



目が覚めると、いつものベッドの中。
普段よりも早い時間に起きて、頭がぼんやりとする。
いつものように夢だったのかな、なんて思えなかった。
ガンツスーツ、着たまま帰ったんだっけ。

「……はあ」

ため息をついてまた布団に潜る。
今日は日曜日。
学校は休みだからゆっくり休もう。
もぞもぞと体を縮ませて目を閉じる。

「……う」

駄目だ。
昨日のが強烈すぎたのか、脳裏に浮かび続ける。
気持ち悪い。
布団から抜け出して、少し涙目になっていることに気づく。

「はぁ……っ」

やだなあ。
折角、学校が休みなのに。
今日一日、ずっと気分が悪くなりそう。
……まだ、呼ばれないよね。
連続なんてあり得ない。
そうだ、もう一寝入りしよう。
お母さんとかは、私がいつも休みの日は寝続けてるの知ってるし。

……いっそ、このまま死んじゃえば良かったのに。

「……っ?」

や、やだ。
私、今ものすごく悪いこと考えてた。
ダメダメ。
ガンツに生かされてる以上、お母さん達ともいられるんだし。
そう、そう考えれば――
私より年下の西くんだって頑張ってるんだから。
……頼っちゃってるけど。
西くん、中学生なのに本当、強いなあ。
精神的にも。
本当は、逆に守ってあげたいけど私の性格上無理。
もっと、強かったらなあ……。

――夢を見た。
私が西くんを守ってあげられる夢。
でも、それは戦力にはなっていないいつもの自分。
骨は折れるわ、顔を思いっきり壁にぶつけられるわで災難。
でも自然と痛みはなくて、夢ならではだと思った。
その代わり、西くんはほとんど無傷。
私が彼を助けてあげられるのかな。
ふと横を見ると、肉片じゃなくて、腕がまるまる落ちていた。
こんなところまで再現してるなんて、なんて嫌な夢なんだろうか。
一瞬、そう思うと西くんが戦っていた星人がXガンにより弾け飛ぶ。
いつもの、光景。
西くんがXガンを降ろし、こちらに足を向けて駆け寄ってくる。
その顔は歪んでいて、いつも見る彼とは違うものだから思わず笑みを溢してしまった。
私の夢の中の西くんって、こうなんだ。

「くそ、まだ笑える力があるなら言えよ」
「だって、やっぱり西くんは年下の子だなあって」
「は? こんな時になに言ってんの」
「大丈夫だよ。致命傷じゃないもん」

ほら、と折れてない方の手を持ち上げてひらひらと振る。
その手を乱暴に捕まれて、痛い程に握り締められた。
っていうか本当に痛い。
あれ? これ夢じゃないの?
その前に西くん、ガンツスーツ着てるときにそんなに力入れちゃダメだよ。

「馬ー鹿。お前は囮なんだから怪我しちゃいけねーんだよ」
「えー……」

確かに囮が動けなかったら意味ないしね。
正論か。
じゃあ私は彼の役にたってなかった訳か。
一人で納得し、西くんの手を握り返す。
暖かい。……夢じゃない。
なんか安心しちゃった。
こんな世界で大怪我をおって、でも側に知っている人がいるから。

「西くん、なんか眠くなっちゃったー……」
「は? あの部屋に行く前に寝るなよ。つーか、寝るな」
「大丈夫大丈夫……。でも部屋に行ったあと、家まで送ってほしいなあ……」
「絶対に嫌」

西くんらしい答えだ。
クスクスと笑い、転送されるのを待つ。
まもなくして、いつものように体が消えていく。
良かった。
今日も帰れる。
目を閉じ、ゆっくりと転送されるのを待つ。
痛みが引いていくけれど、眠気は去っていかない。
……戻ってきたんだ。

「相変わらずの0点。さすがだな」
「また西くんに守られちゃったしね」
「…………」

へらへらと笑うとおでこを思い切り叩かれた。
だからスーツを着てるときは……。

「……帰る」
「えぇぇ……待ってよー」

ごろごろと転がって、立ち上がった西くんの足下まで行くと睨まれた。
お約束。

「……乗れ」
「へ?」
「間抜けな声出すな。さっさと乗れって言ってんだよ」

私がふざけている間に西くんがこちらに背中を向けて座っている。
おぶってくれる、ってこと?
本当に夢の中の気がしてきた。
西くん、いつもこんなことしないのに。
私がどんなに疲れてぐだぐだしてても気にもかけないのに。

「いいの? 私重いよ? 西くんより年上だし」
「これ着てて重かったら相当だな」
「う……」
「早くしねーと置いてく」
「……じゃあ、お願いします」

背中に乗ると、すぐに持ち上げられる。
重いって言ったのに、案外軽々と持ち上げられて驚く。
やっぱり男の子だな、と思えばいいのか、スーツのおかげと思えばいいのか分からない。
玄関を抜けて、外へ出る。
涼しい、美味しい空気。
少し肌寒く感じる空気も、西くんとくっついているからあまり感じない。
西くんが歩く度に体が揺れるのが心地よかった。







いつもより優しい西くんも好きだなあって、思ったり。







(次は絶対傷なんて負わせねー)
(本当に弟にしちゃいたいなあ)




久々に5000文字オーバー……!
西くんは割りと本気だけど、主人公は弟としか見てない、みたいな。
西くんは守りながら戦って早く100点を取りたいけど主人公も一緒に生き残りたいとか。
主人公は100点を取って早く解放されたいけど、星人とは戦いたくない、戦いに参加したくない。
すれ違いすれ違い。

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