多ジャンル小説置き場

□暑い日には
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夏の暑い日。
私は売店でラムネを買っていつもの場所に向かう。
ごくごくと飲みながら歩いていると、背中にぱふっと何かがぶつかった。

「はわっ……」
「あ、はぐちゃん」

綺麗な長い髪をボサボサにして手に本を持っている小さな大学生がいた。
花本はぐみちゃん。
すっごく可愛い子です。

「ご、ごめんね。これ…見てたら…ぶつかっちゃ…て…」
「?」

ふとはぐちゃんが言葉を止めて何かをじっと見る。
私の手にあるラムネ。

「…飲む? 結構炭酸キツいよ」
「えっ、いいの?!」

キラキラと目を輝かせるはぐちゃん。
う〜…っ!
可愛いっ…!!

「うん、いいよ。最近暑いもんね〜」
「クーラー、廊下にもあるといいのにね」
「確かに」

笑いながらラムネをはぐちゃんに渡そうとした時。
はぐちゃんの後ろから誰かが来た。
…すごい勢いで。

「誰だろ」

そういった瞬間、私の手からラムネが消え、私とはぐちゃんの間に背の高い男子が。

「…あっ、森田、さ……」

誰かがわかって声を上げた。
でもすぐに消える。
だって…
だって…

「…ぷはー! やっぱりラムネ最高☆」
「はわわわっ…! 似伊ちゃんのラムネが……!」

森田さんが、ラムネを飲み干した。
飲み干した後、ぐっと親指を突き出してムカつく顔をして。

「ちょ…ちょっとー! 森田さん何してるんですかぁ! 私の…ラムネ…っ! はぐちゃんにあげる…ラムネ…っ!!」

思わず森田さんの襟首を掴んで叫ぶ。
なんで…
私がはぐちゃんにあげようとした時に来るの…!

「あはは、いやー、やっぱり人が買ってくれたものって美味しいな☆」
「買ってあげた覚えないんですが?!」
「細かいことは気にするな」
「気にします。今からラムネ買ってきてくださいよ! 私とはぐちゃんの分!」
「無理」
「真顔で言うなぁ!」

森田さんの発言を返しているとはぐちゃんがあたふたしている。
はた、とはぐちゃんが声を出す。

「あ、修ちゃん!」

あわわ、と言いながらはぐちゃんは花本先生に助けを求める。
はぐちゃんの声が聞こえたと同時に、花本先生の苦笑いが聞こえた。
ちなみに森田さんは気絶状態。

「森田がラムネ飲んだって?」
「そうなんですよ! はぐちゃんにあげようと思ったのに…! 私もまだ少ししか飲んでないんですよ?!」
「はは…」

花本先生はまた苦笑い。
むぅ…
この馬鹿先輩に何か言ってください!

「…て言われてもなぁ…。こいつはそんなことで…って、ん…?」

あれ、どうしたんですか、花本先生。

「今、飲んだって言った?」
「はい」
「え、じゃあ…それを森田が飲んだ?」
「はい」

答えた瞬間、花本先生硬直。
あ、煙草落ちますよ。

「…はぁ…それさ、間接キスじゃないかな、と思うんだけど…」
「あぁ、そういえば」
「えっ…」
「なにっ?!」

森田さん復活。
硬直してるはぐちゃんは可愛いなぁ…。
森田さんが赤くなるにつれてはぐちゃんは顔が青ざめてる気がするんだけど…
なんで?

「な、なななななっ…」

森田さん慌てすぎです。

「似伊ちゃんの…キスが…!」

あぁ、はぐちゃんは可愛いとしかいいようがない…!

「なんで俺だけそんな扱いなんだよ!」
「馬鹿だからです」
「!!」
「まあまあ…一応、本当だからな?」
「先生っ…!!」

全く…
いつの間にか私の手からいなくなるし…
不思議な人…。

「と、とりあえずな、俺はお前なんかとするつもりなかったんだからなー!!」
「何言ってるんですか。たかが間接でしょう。直接じゃないんだから。森田さんなんて直接、はぐちゃんにしちゃってるじゃないですか」
「はわわわー!」
「おまっ…見てたのかよ!」
「ええ、バッチリ。はぐちゃんの顔にマフラーをぐるぐると巻いて叫びながら逃げましたよね」

にっこりと笑うと、今度は二人とも真っ赤になった。
逆に、花本先生のお顔はすぐれない様子。

「へぇ…やっぱりそうだったのかー…森田くん?」
「せ、先生?!」
「やっぱりはぐは王子様のキス☆ で寝込んだのか…」
「…森田さん、がんば☆ はぐちゃん、ラムネ飲もうかー」
「えぇぇぇ?!」
「え、で、でも…」

戸惑うはぐちゃんを引きずり、森田さんと花本先生から離れる。
後ろから森田さんの悲鳴が聞こえたのは聞かなかったことにしよう。
私達はラムネを買い、いつもの場所に向かう。
そのあと、花本先生は清々しい顔で帰ってきた。
森田さんは……



体中ボロボロの所を竹本くんに見つけられましたとさ。



(うわっ! 何してるんですか?!)
(竹本…間接キスって恥ずかしいよな?)
(え? な、何言ってるんですか。それより傷が…)
(…やっぱり恥ずかしいよなぁ…)
(全く…何したんですか)
(神経おかしいだろ、似伊)
(森田さんに言われたくないと思いますよ)

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