多ジャンル小説置き場

□ここにいるべきじゃない
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「西くん」

うぜぇ。

「西くんってば」

うぜぇうぜぇ。
いつもいつも着いてきやがって。
俺に着いてこればミッション潜り抜けられると思ってんのかよ。
こっちは囮に使ってんだぞ。
だから奇跡的に助けてるだけ。

「西、く……」

今日はしくじった。
あいつに怪我をさせた。
致命傷にもなる大怪我。
頭から血が流れて、腕は変な方向に向かって、片足は膝から下がない。
囮になりきれなかっただけ。
まだ星人は生きている。
転送は当分されないだろう。
それなら。

「に、しく……」
「いっつも思ってた。いつか殺したいって」
「……えっ……?」

Xガン片手に、自由に体を動かせないこいつを仰向けにさせてまたがる。
膝立ちで間にその体を挟んで、Xガンを持っていない方の手と顔をこいつの顔に近づける。

「な、んで……西く、やだ……」
「怖いだろ? もう星人なんか見たくねぇだろ」
「や……っ、やだ……っ」

状況を察したのか、怯えきった瞳が揺れる。
片手で俺を制そうとするが、その腕を少し力を入れて踏みつける。
ごきん、と。
滅多に聞けない、寧ろ聞かない音が響く。
ガンツスーツを着てるだけあって割りと簡単に。
踏みつけたときの感触が体全体に伝わってぞくぞくした。
少し遅れて悲痛な、小さな悲鳴が脳に響く。
これがあの音と混ざりあったらどれだけいいのだろうか、なんて考えて笑みが溢れる。

「いたっ……痛いよ、西くんっ……!」
「もう、一回死んでるのにな。こんな感覚、いらねーよな」

口を開きかけたこいつの顔にXガンを向ける。
最後に目が合った。
躊躇なんてしない。
ここでしたら、こいつが。

「またな」

変な音がして、似伊の瞳が大きく開かれる。
覚悟したような顔。

「西く、好き――」

微かに聞こえたその声は、肉片となって消えた。
ぴちゃ、と生暖かい血と小さな肉片が飛び散ってくる。
その肉片を見つめながら、再び笑みを溢す。

ずっと殺したかった。
うっとうしくて敵わなかったから。
いつか事故にみせかけて殺してやろうと思ってた。
殺したくて殺したくて殺したくて……。
いつの間にか殺す機会を失っていた。
気がつけばあいつが殺られる前にXガンを打っていたし、星人は他のやつらにも目をやるからだ。

でも、やっと。
やっと殺せた。
最後にお前を殺るのは俺だって決めてたんだからな。
感謝しろ。
だってお前はこれで――






これでゲームから解放されるのだから。







(俺も、嫌いじゃねーよ)



西くん好きで殺されても、気持ちだけは変わらない子。
西くんも殺したい衝動を抑えつつあったけど、死にかけを見たら楽にしてやりたいという気持ちが優先されたっていう
西くんぽくなくなるなあ……

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