多ジャンル小説置き場

□ふてくされて、ズルくて
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今日はいつもより気持ちのいい日だ。
ガンツのミッションで初めて点数を取れた次の日だから。
こんなに気持ちいいんだから、せっかくだし外に出よう!
るんるんと家を出て、すぐ近くの駅へ向かう。
場所はどこでもいい。
適当な駅で降り、空気の良さそうな場所を探す。
みずみずしい木々と家族団欒している人達。
うん、ここにしよう。
日陰になっているベンチに座って一息ついて間もなく、ふと見覚えのある姿を見つける。

「……西くん?」

ミッションのときによく見る灰色のパーカー姿。
どこかに向かって歩いているようで、私と同じ、目的なんかない。
大きなバッグを持っているところを見ると、Xガンが入っていそうだ。
ということは……ガンツスーツも着てるのかな。

「あっ……」

ぼーっと西くんを見ていると、彼が私くらいの高校生に絡まれた。
西くん、結構目つき悪いもんね。
それだけで絡む人も絡む人だけど。
でもあのままじゃ、Xガンで撃たれかねない。
そうすると、ミッション時の光景が浮かぶわけで。
あれは結構トラウマになるからね。
止めるしかない、か。
とすると、どういう感じで行けばいいんだろう。
友達? 弟?
……弟でいこう。
精神的には向こうが"兄"だけど弟の方がしっくりくる。
別に、名前呼んでみたいとか、どんな反応するかとかが本音じゃありません。
えーっと、西くんの名前は……。

「じ、丈一郎!」
「……は?」

予想通りといえば予想通りの「なに言ってんのこいつ」と言いたそうな顔。
西くんらしい。
でも、もうすでに彼の手は鞄の中に入っているから早く逃げなければ。
彼の腕を掴むと、西くんに腕を振り払われそうになるけれど適当に理由をつけて誤魔化す。

「すみません。弟、今反抗期なので許してください」
「勝手に弟って言ってんじゃ――」
「ほら、行くよ、丈一郎ー」

ぐいぐいと腕を引っ張ると、舌打ちをしてしぶしぶついてくる。
男子高校生は私の登場でつまらなくなったらしく追ってこない。
それを察した西くんが腕を思い切り振りかぶり、腕がもげるかと思う。
ガンツスーツ着てるときは気をつけて……!

「……んだよ」
「んー? 西くんが絡まれてたから助けただけー」

正しくは男子高校生達を、だけど。

「余計な世話やいてんじゃねーよ」
「でも西くんが弟に思えて楽しかったよー」

ふわふわの髪を撫でるとその手を掴まれる。
まさか撃つ気じゃないかとハラハラするも、西くんはいつもより目を鋭くさせて睨むだけだった。
そこまでは怒ってないのか、良かったー。

「いつまでも年下扱いするなっつーの」
「年下でしょ?」

さっきまで座っていたベンチに座り、立ったままの西くんを見上げる。
木漏れ日で西くんの姿が陰っている。
もう一度舌打ちをすると、西くんが屈んだ。
座るのかな、と思って隙間を空けようとすると肩をぐっと押さえられる。
動くなということなのか、見下されているのかよく分からないままじっとしていると西くんは姿勢を低くさせる。

「西く……」
「黙ってろ」

そう言い残すと、西くんはまっすぐ私の瞳を見て、一度だけ瞬きをすると視線を落とした。
唇が、重なる。
一瞬だけ重なり、すぐに離れたときの西くんはなんとも意地悪そうな顔で。
状況をようやく理解した私は一気に顔に熱が集まるのを感じる。

「えっ……あれ!? 西くっ……!?」

西くんを見る度に心臓がドクドクと脈打つ。
意識しすぎ……!
手のひらで熱を吸収しようと顔を覆うようにくっつけると西くんが私な右手をとって、こちらを見ながら手の甲にキスを落とした。
その様子に更に顔が熱くなり、春先だというのに熱中症になりそうだ。
そんな私を、西くんはくつくつと笑って口を開く。







「これで"弟"なんて言わせねー」







(えっ、ていうかここ外……! 恥ずかしい……っ)
(気にしなくていいじゃん)
(気にするよ!)

((まさか年下の子にこんなに踊らされるとは))





よく分からない←
弟と思われるのが気にくわなかったんでしょうね。
ふてくされてちゅーするのが書きたかった←後付け

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