多ジャンル小説置き場

□それが幸せ
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「陽日先生」
「なんだよー、いきなり『先生』なんて」
「ふふっ、懐かしくなって」

生徒と先生。
そんな恋をしていた私達。
今では隠すことなく付き合っている。
一時期はすごく不安になることもあった。
けれど、今ではすごく幸せ。
こうしてまた、隣に座って星を眺めることができる。

「お前はさ」
「はい」
「いつでも幸せそうな顔してるよな。会う度にいつも」
「当たり前ですよ。直獅さんといればいるほど、私は幸せになれるんです。直獅さんの隣にいることが……一番の幸せです」

暗いなか、星明かりだけを頼りに直獅さんの手をギュッと握る。
自然に繋げることのできる手。
直獅さんも握り返してくれる。

「こうやって、ずっと直獅さんの側にいたいです……。いいですか?」

少し意地悪っぽく言ってみせると、直獅さんは頬を赤らめ、慌てた口調で言う。

「あ、当たり前だろ?! 寧ろ、オレがお願いしたい位だぞ……」
「ふふっ、ありがとうございます」
「お、おう……」

直獅さんは頭をかいてちらっと私を見る。

「……なんですか?」
「へっ?! な、何がだ?!」
「こっちを見ていたので。何かあるのかな、と」
「そ、そんなことはない! ないない!」

手をぶんぶんとふって慌てる直獅さん。
思わず首をかしげてしまう。
直獅さんは何度か言葉につまったあと、口を開いた。

「はあ……。お前には敵わないな」
「直獅さんが嘘が下手なんですよ」
「うっ……。それは仕方ないだろ〜……」

寧ろ、私はそっちの方がいいんだけどね。
だって、嘘はつかれないってことだもん。
クスクスと笑うと、直獅さんは「むー……」と唸った。

「すみません。それで、何かあるんですか?」
「えっと……その、なんていうか……。あー! 今から言うのはちょっと恥ずかしいぞ!」

真っ赤になってしまう直獅さん。
なんだかほほえましくなってしまい、キュッと更に強く直獅さんの手を握りしめた。
直獅さんは私をちらっと見やり、決心したように口を開く。

「その、な。オレもお前とずっと一緒にいたいなってさ。年をとっても、どんなに辛いときも、幸せなときも……。オレも、似伊とといることが幸せだからさ」
「直獅さん……」

いつもの笑顔を向け、私の頬に手を伸ばす。
そして、額にキスが落とされた。

「ふ、不意討ちは卑怯です……」
「ごめんごめん。恥ずかしさを紛らわせるつもりでさ」
「……じゃあ、私からも仕返しです!」
「へ……?!」

こちらに向いていた直獅さんの頬に仕返しとキスをする。
直獅さんはまた真っ赤になって、そうした私もつられて顔が赤くなる。
でも、お互いにちらりと見た視線がぶつかり、同時にふき出してしまった。

「今更恥ずかしがるのも変だよな、全くー」
「ふふっ、そういう直獅さんだって」
「き、気にするな気にするな! 俺は大人なんだからそんなことないぞ」
「顔真っ赤ですよ」
「こ、これはその……」

やっぱり、直獅さんを好きになって良かった。
すごく安心する。

「……直獅さん」
「ん?」
「ずっと、ずっとずっと……側にいてください」
「それは俺の台詞だって! というか、オレがお前を幸せにする」
「はい……!」

そっと重なる唇。
優しくて、本当に幸せだって感じられた。
これからはずっと一緒にいられる。
一緒にいることで、幸せが増えていく。



また唇を重ねるときは、人生で一番素敵な日のこと……




(あなたと過ごす日々を大切に)

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