短編【HP】

□ファーストネーム
1ページ/1ページ


夕食の後、私はすごく機嫌が良かった。
大好きなアップルパイが出てきたから。

ホグワーツのアップルパイ、大好きなんだよね……!
なんだろう、あの丁度いい甘さといい、あのパイのサクサク感……!
最高!
今までに食べたことないもの!

ふと夕食のアップルパイを思いだし、くぅ、とお腹が鳴る。
あー……
なんかお菓子あったかなー……。
なかったらグリフィンドールの寮に行ってウィーズリーの双子からもらおう!

お菓子ーお菓子ー、なんて歌いながら廊下を歩いていくと、後ろから声をかけられた。


「おい、ブサイク!」

「なっ……んぐっ?!」


慣れたムカつく言葉が耳に入り、勢いよく振り向くと珍しく一人のプラチナブロンドでオールバックの顔が見えた。
と思うと、口に何かが突っ込まれた。
半分むせそうになったけれど、もぐもぐと口を動かすと何が入れられたか分かった。

「ふぁっふうふぁい!」

「口に入れたまま喋るな。全く、行儀がなってないな。これだからブサイクなんだ。それから腹の音が聞こえるぞ、あんなに食べてたのにまだ足りないのか、ブサイク」


散々悪口を言うドラコにムッとしながらごくりとアップルパイを飲み込む。
しかも合間合間に『ブサイク』と入れてくるのがムカつく。


「ブサイク言い過ぎ! お坊ちゃん!」

「ブサイクにブサイクと言って何が悪い。それからお坊ちゃんって呼ぶのをやめろ!」

「お坊ちゃんだって事実ですー」

「お前っ……性格までブサイクだな!」


それだったら私、良いとこ何もないじゃん!
ていうか……


「ドラコには言われたくない!」

「…………っ」


あ、あれ?
黙っちゃった……?
というかなんか顔赤いけど大丈夫なのかな。


「ぼ、僕をファーストネームで呼ぶな!」

「は……?」


突然叫んだドラコにぽかん、と口を開ける。
ドラコは何か怒ってるのか、と思ったけれど謝りたくない私は理由を聞いてみる。


「なんでファーストネームじゃ駄目なのよ」

「だ、だからっ……」


そこでドラコは言葉を切り、顔を背ける。
首を傾げて待っているとこちらに近づいてくる。


「……?」

「お、お前に呼ばれると心臓が破裂しそうになるからだっ……。ブサイクに呼ばれて尺だけどな……っ」

「はっ……?!」


急に言われて目を見開く。


「え、ちょ……それって、つまり……?」


うわ……
どうしよう、私かなり焦ってる……?


「……分からないのか、バカ」

「なっ……! さっきから悪口ばっかりなに……ひゃっ?!」


抗議しようとドラコを睨み付けたとき、ドラコが私の腕を引っ張った。
気がつけば私はドラコの腕の中。

ていうかここ廊下……!
走り去っていく皆の目が突き刺さりますが!

軽くパニックになっていると、ドラコが耳元で話し出す。


「つまりだなっ」


イライラした口調で話すドラコに思わず黙ってしまう。






「お前が……ノエルが好きだ」





(あ、あんなに悪口言っておいて……!)

(お前は何も知らないな。……好きな奴程イジメたくなると言うだろう)

(だ、だからって……!)

(で? ノエルの返事はなんだ)

(……っ、好きに決まってる……!)








.

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ