短編【HP】
□一緒にいる時間
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談話室の火がユラユラと揺れる。
僕は椅子に座って静かに本を読んでいるはず――だった。
しかし、僕の膝にスリザリン生のノエルが座っている。
鬱陶しいことこの上ない。
だが、そうかと言って払いのけることもできないのだから困ったものだ。
「……いい加減に離せ」
「やだ」
僕が言い終わるかどうかというところでノエルが答える。
ギュッと強くなる腕の力。
どうしたのか、と思ったがそのまま気にしないことにする。
「本が読めないだろう」
「やだ」
またすぐに返された。
もういい、とりあえず放っておこう。
パラリと本のページをめくる音と、パチパチと跳ねる暖炉の音だけが響く。
僕もノエルも黙って時間が経つのを待った。
時々、寮から出てきた生徒が僕たちを見ていたけれどすぐにどこかに行ってしまう。
いくらか時間が経ち、もうすぐ本を読み終えると思っていたらノエルのか細い声が耳に入ってきた。
「……また今度、ずっと一生にいてくれるなら……いい、よ」
また強く腕に力を込める。
僕は一つため息をつき、本を閉じる。
「……いい。今からずっと一緒にいてやる。また今度と言った日にもな」
背中に手を回して抱き締める。
すると今まで力が入っていた腕から力が抜けた。
「……ありがと」
小さく呟いた彼女の言葉に、黙って頷いた。
本を読む日なんていくらでもある
(あんな悲しそうに言われたら、いくらなんでも断れない)
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