短編【HP】

□二人の幸せが
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ジェームズはリリーが好きで。

私はジェームズが好き。

なのに、馬鹿な私はいつもリリーにジェームズの気持ちを知って欲しくてなだめている。
……本当、馬鹿。


「リリー、ジェームズは本当にリリーのことが好きなんだよ?」

「そんなこと私が知ることじゃないもの」


お願い。
そんなこと言わないで、リリー?
知ってもらわないと困るの。
私、すごく苦しいから。


「全く、あんな人と同じ寮だなんて……」

「仕方ないよ。ジェームズ、一応は成績いいんだから」

「誰が一応、だっていうんだい?」


がっと組まれる肩。
近くにジェームズの顔がある。
心臓がわずかに跳ねたけれど、すぐにおさまった。

……わかってる。
私には興味がないから、こんな風にできるんだよね。
友達だから。
リリーは……大切な人だもんね……?


「ちょっと、いきなり現れないでくれる? ポッター」


リリーが嫌そうに言う。
でもジェームズはめげない。
こっちが恥ずかしくなるようなセリフをスラスラと言い続ける。


「あなたといると恥ずかしいのよ、ノエル、私先に行くわね」

「えっ」

「ああ、待ってよ! 僕のエヴァンズ!」

「誰があなたなんかの! 着いてこないで!」


リリーがぴしゃりと言うとジェームズは口を閉ざした。
リリーが去っていくのを見ながらジェームズがニヤニヤしていた。


「またフラれたね。ジェームズ」

「いいんだよ。嫌よ嫌よも好きのうちって……言うんだろう?」

「いや、私に聞かれても」


こうやって私は作り笑いを浮かべる。
あんなに嬉しそうなジェームズに胸が痛むなんて。
私はなんて最低なんだろう。

こんな風に一途なジェームズに惹かれたのに。
叶わないと知っていても望んでしまった。
この苦しい気持ちを。


「……ジェームズは本当にリリーが好きなんだね」

「当たり前じゃないか。僕の運命の人だよ」


ジェームズは私の方を向かない。
リリーが去っていった方向を愛おしそうに見つめるだけ。


「……私がジェームズを好きって言ったら……困るよね?」


ぽつりと言ってみる。
ジェームズはふと振り返って……


「何か言った? ごめん、聞こえなくて」


私と同じ作り笑いを浮かべた。
そんなジェームズを見て泣きそうになるのを堪える。


「……何でもないよ」





そう言うのが、精一杯だった。





(この気持ちは絶対に届かない)

(魔法を使っても……絶対に)

(でも泣かない)

(ジェームズの幸せが私の幸せ、なんて言わないけれど)

(二人の幸せが、私の幸せ)

(……なんていうのもいい、かな……?)



 

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