短編【HP】

□想いは沈み、涙は軽く
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はらはらと、花びらのように落ちる涙。
あまりにも軽くて、あまりにも儚い。


「……ごめん、ごめんね」


涙は女の武器だって言うけど、そんなのは嘘。
だって彼には利かない。
彼の心が離れてしまったから……もしくは、私の心が離れていったから。
彼はただ私の手を握って謝り続けるだけ。


「僕といると君まで駄目になってしまうから、だから……」


私はぶんぶんと首を振る。
もう聞きたくない、という意味じゃなくて。
彼のそんな顔を見たくないから。


「……もう、いいから。リーマスがそういうなら、仕方ない、よね……?」


リーマスは黙ったまま。
きゅっと手を握り返すとリーマスの力が緩む。
そんなリーマスに更に涙が溢れる。


「ごめんね……君に嫌われたくはないから。だから、僕は君を傷つけるよ。どんなに愛しい君でも……」


リーマスの顔が歪んだ。
彼は何も言ってくれない。
なぜ私と別れるのかさえ言ってはくれない。
"愛しい"と言ってくれるのに。
所詮……グリフィンドールとスリザリンだから……?


「もう、いいよ……リーマス。」


この手を離したらリーマスとはさよなら。
恋人ではなく、友達になる。
悲しい、けど我が儘は言えない。
だけど泣いてるのは許して?

涙が止めどなく溢れる。
その瞳で彼を見れば、彼の瞳は揺れていて。
でもそれが本当なのか私には分からなかった。


「……ポッター達に、よろしくね。……ルーピン」


久々に呼んだ彼のファミリーネーム。
リーマス……ルーピンは驚く様子もなかった。
ふと手を離そうとすると、ルーピンの指がぴくりと動いた。
……でもそれだけ。
握ってはくれなかった。


「……また、ね」


震える声でなんとか言う。
お互いに目を合わさず、離れた。





泣いたところで、無意味だった。





(私はスリザリンだから、泣いたら気が変わるだろうと)

(そんな気持ちだった)

(だけど、彼も泣いていて)

(お互いの気持ちが一緒だったから……)

(意味がなくなったんだと思う)

(逆にそれでよかったかな、なんて思う私はどうしたかったのだろう)




お題お借りしました
Hiver
『泣いたところで、無意味だった』


 

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