多ジャンル小説置き場

□お祝いしたかっただけです
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今日は、皆から恐れられるあの風紀委員長さんの誕生日です。
彼は怖いけれど、やっぱりどこかに優しさはもっているのではないかと思うのです。
一度、勉強に疲れて風紀委員長さんの進出場所だということを忘れて屋上に行ったとき、見てしまったのです。
黄色い小鳥と戯れる風紀委員長さんを。
その姿を見ていると、やっぱり嫌な人とは思えなくて。
気づいたら目で追うようになっていました。

「何が好きなのでしょう……」

ふう、と窓の外を眺める。
眼鏡越しの早朝の風景はぼんやりとしていて、また変えなければと考える。
……ではなくて。
風紀委員長さんは、私みたいな人が嫌いですから誕生日プレゼントはいらないのでしょうか。
ですが、せっかくの誕生日。
何かして差し上げたいです。

「よく"かみころす"など言っているそうですから、動物が好きなのでしょうか」

でもさすがに動物はプレゼントできません。
学校に連れてきたら怒られちゃいます。

「……うーん」

そもそも、男性にプレゼントというのは初めてなので何をすればいいのか。
何が喜ぶのか……。
私にできることと言ったら、裁縫や料理です。
……あ。
そうです! 裁縫なら、動物だって出来るじゃないですか!
家庭科で使うため、裁縫道具も、生地もあります。
私ったら、相変わらず頭の回転が遅いです。
こんなのじゃ、今以上に成績をあげるのは無理ですね。

さあ、そうと決まれば今日の下校時間までに仕上げなければ!
動物はあの小鳥さんでいいですね。
眼鏡の度は……気合いでなんとかしましょう。
神様は私にたくさんの時間を恵んでくださいます……!
ああ、早起きをしてすぐに家を出て良かった……!



「……なんとか完成したものの」

作りすぎ、ですね。
周りには手乗りサイズの小鳥さん。
姿形が曖昧で試行錯誤しましたが、なんとか似ているのではないでしょうか。
ただ、手乗りサイズといって一つに作る時間が結構短かったもので、20個程あるのでは……。
友人には「十分放課で2個のペースって……」と言われましたが慣れというものです。
更に夕暮れ時になっても少し作ったので作れたのです。

「……ただ」

風紀委員長さんが喜んでくれるでしょうか。
こんな可愛いもの、受け取ってくれないのでは。
最初から名乗るつもりはありませんが、後で捨てられてもいいので受けとるだけ受け取っていただきたい。
手頃な手提げ紙袋を取りだし、小鳥さん達を入れていく。
小さなメッセージカードを入れて、手提げ紙袋の口をシンプルなシールで止める。

……というかこんな時間!
まだいるでしょうか……!?

机の横にぶら下がっている鞄を掴み、紙袋を持って小走りで応接室に向かう。
ああ、今が見回りの時間でありますように。
応接室の前まで来る。
どうやらいないみたいです。
神様は私の味方です……!

えっと、ドアノブにかけておけばわかりますよね。
そっとドアノブに紙袋を下げ、その場を去ろうとする。
そして、階段を降りようとした時――

「……ねえ」
「……っ!?」

びくりと体を震わせると、足音がこちらに向かってきて、私の真後ろで止まる。
これは……大変です。
多分風紀委員長さんです……!

「これ、なに」
「えっ……」

咄嗟に振り向くと、私が置いていった紙袋。
登場がお早い。
私は目を泳がせながら何か言葉を発っそうとするけれど、なかなか言葉が見つからない。
ガサガサと音がする。
紙袋を開けたみたいだ。

「……ねえ」
「はっ、はい……っ」

ドクンドクンと胸がうつ。
ど、どうしましょう……!?
怒られる……!

「……なかなか上手いね、これ」
「……えっ」
「でも分からない。どうしてここに置いていくのか」
「そ、れは……」

メッセージカードには気づいていない模様。
一応、白い紙袋に黄色い小鳥さんだからよく分かるように青色の封筒に入れたんだけど……。
仕方ありません。
直接言います……!

「あ、あの……っ」






――お誕生日おめでとうございます、雲雀さん……!






(誕生日、か。忘れてたよ)
(え……っ)
(君は弱いくせに……妙に嬉しい。なんだろうね)
(……なんでしょうね……?)




ハルではありません。ありません。

雲雀さんの誕生日。
Happy Birthday!
今でも好きです。
もう漫画読んでいませんが←
雲雀さんぽくなくてすみません……!
そして誕生日ぽくなくてすみません……!

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