いち

□川辺にて。翳る太陽。
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私は授業を終え、帰る支度をした。
友人と連れ立って下駄箱へ行き、靴を履き替え、校門で別れた。

学校から私の家へは、30分程の道のりがある。本来ならば15分程で着くのだが、大抵遠回りをする。
舗装された道路を通って友人とのおしゃべりに花を咲かすより、川辺の道や、公園に咲く花や木を眺めて一人静かに帰る方が、私には合っている気がした。

本来ならちょうど家に着く頃、私は忘れ物に気付いた。
幸いまだ空は明るい。一度取りに帰っても問題ないだろう、と、川辺を引き返した。





忘れ物は見付かった。今度は一人で、また下駄箱に向かう。
放課後の校舎では、人はほとんど見かけない。たまにすれちがう教師や、窓から見える、クラブ活動に勤しむ生徒ばかりだ。
いつもは人の溢れ返る校舎に人がいないだけでこんなにも寂しく感じるなんて、思いもよらなかった。
私は早くこの校舎から立ち去りたくなって、急いで下駄箱へと向かった。

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