いち
□シンデレラ
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私は路地裏のオンナ。
薄汚れて打ち捨てられた空き缶を転がして空いた時を埋める。
薄着で、身体の曲線を惜しげもなく晒す私を見て決まってオトコ達はこう言う。
“How much?”
ある日、一人の男が私に近づいてきた。これから男が発するであろう聞き慣れたフレーズを思い浮かべながらその男に視線を移した。
「こんなところで何してやがる。」
その燃える様な瞳に目を奪われて私は返事も忘れた。
「おい、何をしてるか聞いている。」
そう怒った様に言うこの男は、誰だ。
「何だい。私はここで商売してるんだ。あんたにとやかく言われる筋合はないね。客じゃないなら失せな。」
みとれた事を悟られないように吐き捨てる様に答えた。
「はっ、何も売ってないのにか?何が商売だ。」
そう言って男は笑う。
「私の身体を売ってるのさ。」
私は吐き捨てる様に言った。不愉快だ。
「知らないやつにとやかく言われる筋合いはないよ。」
男はこう言った。
「俺がお前を知らないとでも?その頭は随分と老いぼれたもんだな。」
その時だ。
あぁ、私はこの男と同じ目の色の少年を知っている。
そう感じた。
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