いち
□蜜林檎
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病床に臥せていた男、スクアーロはすぐ側で林檎を剥く彼女を眺めていた。
手から零れ落ちそうな赤い実は皮を剥がれながら芳醇な香りを彼に届けた。
黄色い表面ではその甘いであろう蜜がテラテラと光り輝いている。
その噎せ返る程の香りに彼は唾を飲み、自分が臥せっている身体であることも忘れて食い入るようにそれを見つめた。
「もう少し待ちなさいよ、この食いしん坊さん」
彼の視線に気付いた彼女は、片手にその実を湛えながらそう言ったのだった。
(おしまい)
欲望にまみれた鮫
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