駄文

□ホットケーキ
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「アンタ、何で今日に限ってそんなもん頼んでんのよ!?」

真正面のハルヒに、指差されながら、そんな言葉を受ける俺の前には、ホットケーキがあった。
場所はいつもSOS団が集まる喫茶店。
まぁ、つまりは、その喫茶店で俺がホットケーキを注文した訳だが。
冒頭のハルヒの言葉から分かる通り、今日は俺の奢りではない。

「仕方ないだろ?朝飯ろくに食ってないんだから」

そう。俺は今日、朝飯を食べずに来た。
だから、早く来れたとも言える。ハルヒよりも早く。


その理由ってのは、実はそんな大したことではないんだが。






〜回想〜


今朝、俺は早めにSOS団の集合場所へ向かった。
いい加減、奢るのが嫌になったという理由もない訳ではないが、本当の理由は別にある。

昨日寝る前、早めに着けば、もしかしたら、少しの間でも、アイツと二人きりになれるのでは?と考えたからだ。
そして、早めに目覚ましをセットしたのだが、悲しいかな、習慣とは恐ろしいもので、俺は普段起きる時間まで、目覚ましに気付かなかった。
そして大慌てで、服に着替え、適当に顔を洗って、寝癖を整え、財布と携帯だけポケットにねじこんで、家を飛び出した。
食パンをかじりながら。

走って来たのが良かったのか、集合場所には予想通り、制服姿のソイツしかいなかった。

「よぉ、長門」

軽く挨拶すると、僅かに首を縦に振られる。
恋人関係になった今、そんな些細な仕草さえ可愛く思えて、何故か笑いが込み上げてくる。

「?」

「いや、可愛いなって思ってな」

不思議そうに首を傾げる長門に、微笑って言ってやると、

「…そう」

顔を背けられてしまった。
だが、返答に間があったところをみると、恥ずかしがっているだけだろう。
嬉しいね、こういった変化は。
なんて、余韻に浸っていると、俺の腹が、悲鳴を上げた。

うわぁ、穴があったら入りてぇ。

「空腹?」

「あ〜…まぁ、な」

そんな心配そうな顔しないでくれ。倒れる訳じゃなし。

「朝食は、有機生命体にとってとても重要。適量摂らなければ、その日一日の行動に支障を来す」

確かに、育ち盛りなこの時期に、食パン一枚は酷だったな。
しかし、長門にそんな風に言われると、なんか違和感あるな。精神年齢的には、俺の方が年上なのに。

「私は既に、例の夏休みにおいて、貴方の歳を越えている」

いや、そんなとこ張り合わなくていいから。
でも、俺が悪かったよ。


「別にいい。それより、貴方は何か食すべき」

そうだな。まぁ、これから入るだろう喫茶店で、何か頼むさ。
しかし、ハルヒか古泉なら問題ないんだが、朝比奈さんだと、頼み辛いな。

「問題ない。朝比奈みくるは、今日は此処には来ない」

そりゃまたどうして?

「詳しくは説明出来ない。禁則事項」

大方、未来人の集まりか何かにでも、連行されてるんだろう。
あの人も大変だな。

「そうかい。なら、仕方ないな」

「ない」

そんなこんなと、長門との二人きりの時間を堪能していると、

「おや?今日は早いですね」

ニヤケハンサム顔が現れた。
云わずもがな、古泉だ。

「困りましたね。これでは、涼宮さんが最後ということに」

うるさい。物言いた気にこっちを見るな。近付くな。
あんなルールを作ったのは、ハルヒだ。たまには、俺の気持ちを理解して貰わんとな。

「まぁ、いいでしょう。たまには、ね」

何か引っかかるが、まぁいい。
そんなにハルヒの機嫌取りたきゃ、今度はお前が最後に来ればいいだろう。

「ふむ、考えておきます」

そんな下らない会話が成される中、アイツは現れた。
俺の顔を見るなり、驚愕して眼を見開いてたのは、少し笑えた。
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