駄文

□決定打
1ページ/1ページ

放課後。
私達SOS団は、いつものように、気兼ねなく過ごしていた。

みくるちゃんは、いそいそとお茶を淹れてくれてて。
キョンと古泉君は、ボードゲーム。
有希は、いつもの席で読書中。

私と言えば。
端から見れば、ネットサーフィン中。
だけど実は、ちらちらと別の方向へ眼が行ってたりする。

こんな大した物は何もなく、ちらちらと見るような価値があるモノなんて、みくるちゃん以外ないような部屋ではあるが、私の眼を奪っているのは、別のモノ。
決して、変な眼で見てるんじゃない。
普段、あんまり表情が変わらなかったり、派手に動いたりしないから、逆に気になってるだけ。
そうに決まってる。

しかし、こうして見ると、綺麗な顔よね。
髪とか撫でたら気持ちよさそうだし。
スレンダーな感じだけど、細くて儚げで、思わず抱き締めたくなりそうな感じ。

笑ったら、きっと可愛いんだろうなぁ。
笑って欲しい。
そんな彼女を、見てみたい。

「おい、ハルヒ」

「…何よ?」

よく分からない考えが、頭を支配してる最中、キョンの声で我に返る。

「何よじゃねぇよ。もうとっくに下校時間過ぎてんぞ。帰って良いか?」

「へ?じゃあ、今日は解散」


そう言うと、キョンはやれやれと言わんばかりに、肩を竦めて退場し、古泉君も追うように、

「お疲れ様です」

と言って、帰って行った。
みくるちゃんも、いそいそと着替えると、

「では、お先に」

と言って、頭を下げて出て行く。
そういえば、お茶を淹れてくれてたのに、考え事してて気が付かなかった。
…妄執だ、あんなの。
そう思うことにして、冷えたお茶をぐいっと飲み干し、

「…ふぅ」

一息吐いた。

「…」

この無言は、私のモノじゃない。
無言なのに、何故か凄く存在感を感じたのは、きっと知らぬ間に近付かれていたから。

「有希、どうしたの?」

恐る恐る振り返ると、何故か有希の顔は、私が立ち上がったら、ぶつかりそうなくらい、近くにあった。
有希は、私の顔に向かって、無言で手を伸ばす。

「な、に?」

「動かないで」

思わず身じろいでしまったが、静止されたので、黙って従った。否、思考が上手く働かなくて、抵抗出来なかっただけ。
有希の細い指が、私の頬に触れる。

何故だろう、心臓が、暴れ出した。
血液が顔に集中していくのも、嫌に実感出来る。

「有、希?」

私の頬をなぞる指は、程なく離れた。


「取れた」

「…へ?」

間抜けな声を上げながら、有希の指先を見れば、一本の睫毛。
多分、私のものだろう。

「凡そ27分前から、これは貴女の頬に付着していた。直ぐに報せることも可能だったが、自然に落下する可能性があったので、言わなかった。しかし、部活が終わった今、このままでは階段を降りる際の風圧により、これが原因で貴女の視覚が損傷を来す可能性があった為、除去した」

…えーっと。つまり、あのままだと、私の眼に入る危険があったから、取ってくれたってこと?

「そう。私がこれを除去したことで、貴女の危険は去った。それだけ」

「そっか。ありがと」

「いい。…じゃあ」

言って、有希はスタスタと去って行ってしまった。
有希がドアを閉めた直後、私は机にうつ伏した。

「ぅぁー…」

先程触れられた頬が熱い。心臓も未だうるさい。
あの行動は、有希にとっては、何でもない行動だったかもしれない。只、純粋に私を心配してくれてのことだと思う。

でも、私にとっては。

本当は、気付いてた。只、認めたくなかっただけで。

無意識に眼で追ってしまうのも、今心臓が暴れてるのも、頬が熱いのも。


私が、精神病にかかってしまったから。

有希のあの行動が、私にとって、重大な決定打になった。


今、はっきりと自覚した。
私は。

有希が好きなんだって。
きっと、出逢ったあの時から。



END





















――――――――
あとがきのようなもの
自覚しちゃったハルヒ。
長門の行動は、ハルヒの観察上のもので、大した意味はありません。今のところは。

次からは、少しはカップリングっぽく書きたいと思います。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ