駄文
□微熱
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今朝の天気予報の降水確率は、40%という中途半端なもの。
正直、そんな分かり辛い予報よりも、いっそ降るか降らないかきっちりして欲しいと思う。
そう思いつつ、窓から空を覗けば、雲一つない晴天だった。だから、傘は要らないと判断して、家を出る。
しかし、放課後辺りから、雲行きが怪しくなって来た。
こうなれば、団活無しにして帰ってしまおうかと思ったけど、そうすると、あの子にも会えない。そんな理由で、それは止めた。
それでも、濡れるのは避けたかったから、今日もいつもと変わらぬ彼女に会えたということに満足して、早めに解散した。
そして、一気に階段を駆け降りた。
が、
「…げ」
思わずそんな声が漏れてしまったのは、雨が降り始めてしまったから。
しとしと程度なら、まだ良かったが、生憎の土砂降り。
「…なんだってのよ、全く」
空を睨むが、当然雨は止みそうにない。
仕方ない。走って帰ろうかという考えが頭を過ぎると同時に、鞄を開けるような音が聞こえた。
チラリとそちらを向くと、
「ゆ、有希!?」
いつの間に隣に居たのだろう。相変わらず無表情な彼女が、其処に居た。
その手には、折り畳み傘が握られていて、無造作にそれを開く。
「入って」
言いながら、差し出される傘。
思考が、フリーズした。
え?今、入ってって言った?
「傘」
「傘?」
「そう」
…えっと。要約すると、傘に入ってと言いたいのかしら?
「走って帰るという選択は、確かに徒歩での帰宅よりは濡れる可能性は低い。しかし、此方の方が貴女が濡れる可能性は更に低い」
まるで、私の考えを見透かしているかのような口振り。まぁ、確かにその通りなのだけど。
好意を持ってる相手なだけに、嬉しいような恥ずかしいような。
数分、私は迷ってた。私らしくない、と感じながら。
普通なら、というか私ならそんな相手置いて帰ってしまうと思う。でも、有希はそうしなかった。
これ以上待たせるのは駄目な気がする…ということを理由にして、私は有希と共に下校することを選んだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて。そうさせてもらうわ」
「そう」
そして、私達は歩き出す。濡れないように、ゆっくりと。
折り畳み傘とは、大抵普通の傘と比べて、小柄な物で。当然、密着しないと、二人も入れない。
というか、気を使ってか、有希ったら私の方にばっかり傘を寄せて
そう思い、私は更に体を密着させる。お互いの吐息が、聴こえそうなくらい。
「…何?」
「こうした方が、濡れないでしょ?」
しかし、密着させた後、少し後悔。
ほら、また。心臓が、暴れ出した。
それでも尚、この時間がもっと続けば良いのにという思考が頭を巡るから、重症だ。
「…そう」
呟いた有希の横顔が、何処か戸惑っているように見えた気がした。
きっと気の所為だと思うけど。
相変わらず降り続ける雨の中、私は願う。
どうか、聴こえませんように。
この土砂降りのように、煩いくらいの心音が。
END
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あとがきのようなもの
相変わらずハル→長っぽいけど、実は長門もハルヒのことを気に掛けてた。的な話が書きたかったんです。
実は続きがあって、分けようか一緒にしようか迷ってるんですが、出来上がり次第決めようと思います。話一緒にする場合、多分タイトル変わります。
結局、タイトル変わって長くなりました。
では、続きからどうぞ。