駄文

□願望(Side K)
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7月7日。

やると思ってはいたが、去年と同様、ハルヒが例の所有地に不法侵入して、笹の葉を掻っ払って来た。
まぁ、地主さんが鬱蒼と生い茂った笹の葉なんざわざわざ数えないだろうから、大した問題にはならないだろうが。
ハルヒよ、掻っ払うなら精々、笹の葉とか小枝とかその辺にしてくれよ?SOS団にまで火の粉が飛び掛かったって俺は責任持てんからな。

さて、それより今の問題は、先程ハルヒによって配られた短冊だ。
去年は、我ながら随分と物欲な願い事を書いちまったからな。今年は少しはまともな願い事を書きたい。
例えば、恋人とずっと居たい。とか。今の俺には、長門という俺には勿体無いくらいの彼女がいるからな。と考えてみたが、ハルヒ辺りに文句を言われそうだから、そのままは却下。せめて、オブラートに包んだ感じに表記しよう。

そういえば、長門は何と書くつもりなのだろうか。少し気になる。
長門に目を向けると、暫く短冊を見詰めていたが、やがて何か思い付いたように、ペンを走らせた。
ふむ。長門には珍しく、少し悩んで書いたっぽいな。どれ、ちょっと拝見させてもらおうか。

「長門、何て書い…!?」


話し掛けながら、薄紫色の短冊を覗き込んで、俺は言葉を失った。
それくらいの威力を持つ言葉が、その短冊には書かれていた。

そう、たった二文字。
'結婚'と。

えっーと。長門よ、まさかとは思うが、それって俺とってことか?

長門はゆっくり頷く。それは紛れもない、肯定の意。

「駄目だった?」

いや、駄目なことはない。ないが、そういう願い事だと、団長が煩そうだぞ?

「…そう」

そんな残念そうな顔するなよ。
それに、その願い事が叶うのは、ハルヒ曰く、16年後か25年後だ。
その、なんだ。その前に、俺が叶えてやるさ。…多分。

「分かった」

あぁ、我ながら、もの凄く恥ずかしいことを言ってしまった。
それでも、納得したらしい長門が満足そうだったから、良しとしよう。

「その願いは、貴方に託す」

そう言って、先程の短冊は、俺に差し出された。
俺は笹の葉じゃないんだがな。でも、他でもない長門に託されたんじゃ、仕方ない。

「まぁ、気長に待っていてくれ」

「待っている」

頷く長門の頭を軽く撫でてやりながら、俺は思った。
この短冊は、約束の証として、大事にとっておこう。と。
4年前、俺が渡した短冊を、長門がずっととってくれていたように。

そして、3年以上は掛かろうとも、16年未満には、この願いを叶えてやりたい。

とすれば、俺の願い事は。

'アルタイルとベガが数光年分地球に近付け'

こんなところか?
っていっても、願い事を託されたのは俺なんだから、全くもって無意味だな。辞めとこう。
それに、こんなバカなこと願うのはハルヒくらいにしとかないと、その内宇宙が滅入ってしまいそうだ。
此処は無難に、

'俺の隣にいる奴と、ずっと笑っていられるようにしろ'

少々クサイ気もするが、こんなもんか?
まぁ、これは願うより、自分で叶える方が、早いかもしれないが。


END


















―――――――――――――
あとがきのようなもの

両Side読み比べて、どっちかっていうと、自分的にはこっちのが良いかな?って思ってます。なんとなくですけど。

皆さんも読み比べたら、楽し…かったら良いなぁ(滅
まぁ、正直な話。あんまし楽しくないかもしれません。

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