駄文

□晴天
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カーテンの無い窓辺から、太陽の光が差し込んで、朝だと告げる。
いつも通りの起床時間。

睡眠モード、解除。

ムクリと体を起こし、暫し物思いに耽る。
が、上手く思考が働かない。寝惚けるという概念は、このインターフェースには存在しない筈なのだが。
原因は、恐らく昨日の大量のエラーの所為だろう。結局対処していないから、蓄積されたまま。でも、不快じゃない。

昨日此処に辿り着いた後、あれは、夢だったのではないかという考えも頭を過ぎったが、確りと刻まれた記憶が、そうではないことを主張していた。

そう、確かに昨日、私は彼に告白された。
私はそれを嬉しいと感じた。だから、その想いを受け入れた。
そして、彼と私の関係は、部活仲間から恋人へと移行した。

だが、そうなった今、私は彼にどう接すれば良いのだろう?
分からない。彼に会えたら、聞いてみた方が良いかもしれない。

気が付くと、普段此処を出発する時間を大分過ぎている。
迂濶。雑念に囚われ過ぎた。
手早く支度し、朝食を掻き込んで、出発。
学校への到着時間は普段より遅いが、許容範囲だろう。
足早にマンションから出ると、いつもと変わらない朝の陽射しが、私を迎える。


朝陽の眩しさに目を細めていると、見覚えのある人物が、此方へ向かっていることに気が付く。

「よう、長門」

思考停止。
…何故、彼が此処にいるのだろう?
この道は、彼の登校するルートに含まれていない筈だ。

「何でって顔だな」

私の表情から、何かを読み取ったのか。彼は苦笑を浮かべている。
私は表情を変化させることが、あまり得意ではない。こんな表情を読み取れるのは、彼くらいのものだろう。

「此処は貴方の登校ルートではない筈」

「まぁ、そうだが。お前と登校したかったんだ。ダメだったか?」

成る程、理解した。
それならば、問題ないし。ダメな訳がない。

「…ダメじゃない」

「そうかい」

納得した彼が歩き始めるのを追うように、私も歩き出す。
暫時、会話なく、只二人の足音だけが響いた。

「…聞きたいことがある」

それを破ったのは、私。
彼はとても意外に思ったのか、数秒固まっていた。

「…っと。何だ?言ってみろ」

我に返った彼は、慌てて聞き返す。
私は、彼の思考能力が正常に戻るのを見計らって、言葉を紡ぐ。


「昨日のあの瞬間から、私達の関係は恋人へと変化した。私はこれから…貴方にどのように接すれば良い?」

全ての言葉を聞き終えた後、彼は真剣な面持ちで、何か考えていた。
数秒後、フッと笑って。

「お前の好きにしろ。と言いたいとこだが、ハルヒのこともあるしな。今まで通りにしてくれ」

「…了解した」

彼の考えは理解出来たが、少し残念。
だが、涼宮ハルヒのことを考えれば、それが最良だ。

「…まぁ、なんだ。二人きりの時になら、お前の好きにしてくれても構わん。というか、俺はそのつもりだ」

またしても表情を読まれてしまったのか、彼はそんな言葉を継ぎ足した。
恥ずかしかったのか、顔が紅い。

「…そう」

呟きながら、私は彼の手をソッと握る。
触れたい。そう思ったから。

彼は目を丸くしていたが、やがて嬉しそうに笑って、握り返してくれた。

「よし。じゃ、行こうぜ」

そして、並んで歩き出す。私も今、もしかしなくても、笑っているのかもしれない。

見上げると、いつもと変わらない筈の太陽も笑っているように見えた。

それは、いつもと変わらない光景が大切だと、そう感じた。ある晴れた日のこと。



END
























―――――――――――――
あとがきのようなもの

帰路から更に続けてみた過去拍手文。
最後の辺りは、某結構有名なギャルゲー(?)のキャラソンから。
ゲームの内容全く知らんけど、好きな声優さんが歌ってたので、聞いてみたら割りと好きな感じの曲だったので、そこから拝借(^^;

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