□プロローグは、終わりを告げた
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頼られる度に、支えて。
支える度に、その笑顔に勇気を貰って。

私達は、そんな関係だった。

それでも、いつまでも私に頼っていたら、きっと唯は、前に進めない。
だから、背中を押した。
一人でも、歩けるように。

結果。
唯は、見事に自分のやりたい事を見つけて、真剣に取り組み始めた。
それは、とても良いことだと思ったし、私はそれを見守るつもりでいた。

のだけど。

「…唯?」

今のこの状況は、なんだろうか。

「…っ」

事を起こした当の本人は、何か言いたそうなのに、何も言わない。
言えない言葉を、無理に飲み込もうとしているように見える。

「どうしたの?」

その表情は普段の彼女に似合わないくらい、あまりに苦しそうで。
私は、押し倒されたという状況にも関わらず、優し目に聴いた。

事の発端は、唯に『部活が終わったら、良かったら一緒に帰ろう』とメールを貰い、程好く生徒会の仕事も終わったので、OKのメールを送り、音楽室に訪れたところ。
ソファに座るように勧められ、座った直後。唯の様子が、いつもと違うことに気が付いた。その瞬間には、もう手遅れで。

気が付いたら、今の状況という訳なのだけど。
はっきり言って、いまいち状況が飲み込めない。

「私はね、」

と。
唯が口を開く。
その唇は、震えている。

「和ちゃんが、好き」

「…私も、好きよ?」

咄嗟に返すと、唯は、ゆっくりと首を振る。

「そういうのじゃ、なくて。恋愛、的な意味」

「…え?」

思考がフリーズする。
そんな私に構わず、唯は続ける。

「本当はね、言わないつもりだったの。でも、言わないで友達のまま傍にいるの、辛くなっちゃって」

泣きそうな笑顔で、唯は「ごめんね、困らせて」と言って、そのまま私の肩に顔を埋めた。
私は、唯のことが嫌いじゃない。
でも、好きのかどうかも、いまいち分からない。
いや。先ずは、否定することよりも。肯定することから、始めてみよう。

「唯」

いつもと変わらぬ口調で、名前を呼ぶと。唯はビクリと肩を震わせた。

「私、まだ何も答えてないわよ?」

唯は顔を上げない。
代わりに、服の袖がキュッと引っ張られる。まるで、すがるかのように。
その様子につい声を漏らして苦笑すると、唯はようやく顔を上げた。

「和ちゃん?」

やっぱり。答えも聞かないで、泣いていたらしい。涙の跡がうっすら見える。
それを優しく拭いながら、私は彼女の気持ちに、自分なりの応えを返す。

「貴女が好きでいてくれるなら、私はそれを受け入れようと思うんだけど。こんな答えじゃダメかしら?」

途端、彼女の表情は。嬉し泣きに変わる。
結局、泣くのね。まぁ、悲しくて泣かれるより、ずっといいけれど。

「ありがとう。和ちゃん」

そう言って、いつものように唯は私に抱き付いた。でも、いつも以上にしっかりと。
私はそれに応えるように、そんな彼女の頭を、優しく撫でる。


恋さえ知らなかった筈の私のプロローグは、終わりを告げた。
さぁ、これから先に待ち受けているストーリーは、悲劇か喜劇か。
なんて、貴女が傍にいるのに、ハッピーな展開以外、想像出来ないけど。

きっと、貴女となら。
どんな展開だろうと、最後はハッピーエンド。



End




























あとがき


和のキャラソン聴いてたら、出来ました。
キャラソン聴いてから和が好きになって、唯と幸せになればいいじゃない的なノリで書いてみた。唯梓よりスムーズに書けたような気がします(・ω<)
そんな訳で(?)メインは唯和と憂梓になるやもしれませんf^_^;
 

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