駄文

□微炭酸
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えっーと。
朝比奈さんはミルクティー。
俺はまぁ、定番のスポーツ飲料でいいや。

「長門、どれにするか決めたか?」

取り敢えず、二人分の飲み物を購入し、抱え持ちながら、長門に眼を向けると。

「…」

長門の眼は、ある飲み物を凝視していた。
それには、いつかの祭の如く、例の銀色宇宙人が印刷されていた。何かのイベントとか記念とかのコラボだろうか。

「これで良いのか?」

指差して聞けば、長門は無言で頷いた。
余程なお気に入りだな。しかし、見たところこれは炭酸飲料のようだが、長門は大丈夫だろうか?苦手な人って飲めないんだよな、こういうの。

「ほいよ」

まぁ、大丈夫だろう。基本、こいつは無敵だし。
…炭酸が苦手な姿も見て見たくないわけでもないが。
まぁ、流石にそれはないか。そんな妄想はおいといて、ベンチまで戻るか。

「お待たせしました。どうぞ、ミルクティーです。冷たいので良かったですか?」

「あ、はい。ありがとうございます」

長門とは別として、この方の笑顔も癒されるね。普通にこの時限の人間なら、この人も俺達みたく好い人と巡り逢えただろうに。勿体無い。

「何ですか?」

「いえ、何でも」


まぁ、仕方ないよな。未来の人なんだから。
別に俺なんかが心配しなくたって、未来で素敵な人と巡り逢えてるかもしれないし。あの大人版朝比奈さんは。
そんなことを考えながら、長門が座ったことを確認し、その隣に腰を降ろす。缶の蓋を外して、一口飲んで、喉を潤した瞬間、

プシュー

隣から、奇妙な音がした。
チラリとそちらを向くと、

「な、長門?」

長門が、炭酸飲料を顔面にぶちまけてしまっていた。持って来る途中、振っちまったのか。
隣にいる朝比奈さんもおろおろしてるし。
しかし、驚いて何が何だか分からないといった顔してて可愛…じゃなくて。

「大丈夫か?」

ジュースが服に滴る前に拭いちまわないとな。
普段滅多に持ち歩かないのに、こんな日に限って何故かハンカチを持っていた俺を誉めてやりたい。
ハンカチで濡れてしまった顔を拭いてやると、為すがままに大人しくじっとしている。
あたかも飼い主に愛撫される猫のようだ。
…なんかもう、いっそのこと抱き締めてやりたい。
いやいや、落ち着け、俺。平常心、平常心。
寸でのところで、何とか欲望を抑えていると、朝比奈さんが楽しそうに此方を見ていた。

「あの、何か?」
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