08/05の日記
02:08
ユリ→レイで独白ちっく
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※おっさま死ネタ
にこり。
笑った顔が好きで好きで、でも目が合えば口を突くのは軽口ばかり。
でも、それでも例えば微笑み返せば朱に染まる頬とか、細めた目元の小皺とか、とにかく何から何まで全てが愛おしい、愛おしかった、俺の大切な――
にこり、と。
微笑まれて、微笑み返そうとして、歪んだ口元はしかし笑みとは似つかぬ表情しか作ってくれない。血の気の引いた白い頬と目元に滲んだ薄い涙の膜が、いつもの軽薄な笑みとは違う優しいそれに似つかわしくない。違うだろ、あんたはもっと飄々とつかみどころがなくて胡散臭くてだからこんな風に笑わなくてつまり――ああ駄目だ考えが纏まらない。
ぐるぐると崩壊しきって回り出した思考のかけらのその波に、声にならない声が重なる。何を、叫びたいのだろう。俺は何を、伝えたいのだろう。
いつもの何でもない言い合いがしたかった、かもしれない。せめて最後くらい正直に腹を割って話すのも良かった、かもしれない。……最後? こんなのが最後だって? こんな呆気ない、こんな、こんな――
形作ろうとした筈の笑みは乾いたそれにすり替わった。ははっ、なんて口から漏れるそれは笑い声になりきっていなくて、本当に、一体俺は何を伝えたい? 何を、何て、声をかけるべきなのだ?
徐々に滲んでいく視界の中、伸ばされた手に拭われた目元と、困ったような呆れたような風の声、その感触と言葉だけが滲まないまま染み渡った。
『ごめんね、ありがとう』
なんて、そんな言葉を聴くために今まで俺はあんたを大切にしてきたわけじゃないのに。往生際が悪かろうが何だろうが、これを最後にするつもりはない。
なかったのに。
風が、間を吹き抜けた。
生暖かい夏の風はしかし、今この瞬間だけ妙に、嫌に冷たくて。
喉を通して口を抜けたこの空気の塊は、叫びだったか笑い声だったか。ああだけど俺は結局、一体何を伝えたかったのだろう。
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