三成×左近 お話2

□優先すべきは
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左近と三成、慶次、そして偽左近の4人は幸村達が呉に出かけた翌日に出陣した。
勿論、秀吉の許可無くして動くのだ。左近はともかく、三成の出陣は極秘だった。
兼続に影武者になってもらい、佐和山城の留守を任せると、馬を駆り陸路で戦場へと4人は向かった。伏犠には忍びが早馬で左近達が行く事を知らせてある。
丸一日、馬を急がせて戦場へ着けば、伏犠と武田信玄が陣を森の中に張っており、4人を出迎えてくれた。伏犠が嬉しそうに左近に近づき。
「待ちわびておったぞ。良く来てくれたのう。」
その手をガシっと握り締める。
偽左近にも。
「良く連れてきてくれた。」
と労っていれば、傾国の中華風の美女。桃色のひらひらした衣を羽織り黒髪を結い上げ、桃色の花で髪をとめている三成が不機嫌そうに。
「俺は貴様なんぞに力を貸したくはないのだがな。左近の子の命がかかっている。」
伏犠は目を見開いて傾国の美女を見つめ。
「お主…三成か???」
「ああ。極秘に出陣する必要があったのでな。」

二人の間に火花が散る。
そこへ信玄が左近と偽左近を両手で、がばっと抱き締めて。
「左近。久しいのう。こうして見ると良く似ておる。両手に花じゃ。」
二人の尻を撫で撫でと両手で撫でれば、左近が肘でグイっと信玄の胸を突いて。
「久しぶりですねぇ。信玄公。会った早々、セクハラは止めて下さいよ。」
偽左近が赤くなって慌てたように。
「このような事をされても困りますよ。伏犠さんに怒られるんで。」
信玄は納得したように。
「これが二人の違いかのう。偽者の方が気が弱いようじゃ。」
三成が信玄に向かってスチャっと扇を構え。
「戦で散るより先に散りたいようだな。」
伏犠が偽左近の手を引き、自分の方に抱き寄せて。
「あまり虐めないでくれないかのう。こっちの左近はわしの大切な宝じゃ。」
伏犠の胸に甘えるように縋る偽左近を見て、左近は。
「勝猛さんは余程、伏犠さんが好きと見える。信玄公。面白い顔をしているからって、俺と勝猛さんに又、セクハラしたら今度はただじゃおきませんぜ。少なくとも殿と伏犠さんを含めた4人に袋叩きにされる覚悟があるならやってもかまいませんがね。」
信玄は楽しげに。
「ハハハハ。やはり左近じゃな。安心せい。挨拶じゃ。軽い挨拶。わしがセクハラをするのなら、もっとじっくりとな。」
そんな様子を見ていた慶次が。
「全く面白い連中だねぇ。俺は前田慶次。戦の加勢に来た。宜しく頼むぜ。」
伏犠に挨拶する慶次。
伏犠が手を差し出して。
「お主の強さは覚えておるぞ。頼もしい助っ人じゃ。わしは伏犠。仙人じゃ。こちらこそ宜しく頼む。」
二人が握手する。
信玄が。
「わしは無視かい。」
「知らぬ仲じゃないだろうよ。」
慶次が楽しげに笑うと、伏犠が。
「戦況を説明したい。わしの幕に来て貰おうかのう。」

4人を幕に案内する伏犠。信玄も共に着いてきて。
伏犠の幕に入ると台の上に伏犠が地図を拡げて戦況を説明する。
「ここが呉の国境。で、わしらがいるのが国境の外、どこにも属しておらぬ森の中じゃ。孫策軍が左に更に奥に孫堅軍が息子孫権と共に布陣している。後、2日程進めば又、奴らの軍に遭遇する。わしらの軍と3軍で挟み撃ちすると事になっておるのじゃがのう。兵力は相手はおよそ2万。こっちは1万、孫軍は2万。」
左近が伏犠に。
「相手とてこちらや孫軍の動きを把握しているでしょ。簡単に挟み撃ちにされますかね。」
信玄が。
「散るかもしれぬのう。奴らの狙いは孫呉に侵入する事。こちらの道を迂回して、交わされたらひとたまりもない。」
扇の先で信玄が示す迂回の山道。
三成が両腕を組んで。
「情報戦だな。斥候は出してあるのだろう?」
伏犠が頷いて。
「そこら辺は抜かりはないがのう。こちらの策も兵の動きも臨機応変にということか。もう少し情報を待ってみるとしよう。それにしても皆、疲れたじゃろう。幕を用意してある。食を取りゆっくりと今宵は休んでくれ。それから左近。」
「何です?伏犠さん。」
「明日は兵の前で鼓舞して欲しいんだが。島左近は英雄じゃ。以前、遠呂智を倒したのだから。皆を鼓舞して士気を高めてほしいのじゃ。」
「俺でよければ鼓舞でも何でもしましょ。それにしても誰が遠呂智の残党を率いているんです?生き残りの妖魔兵だけじゃここまでの勢力にならないと思うんですがね。」
伏犠が信玄と顔を見合わせ困ったように。
「正体を見せぬのじゃ。敵の大将は…」
信玄も。
「正体が解れば、手の内も解りやすいのじゃが。」
二人の言葉に左近は頷いて。
「解りましたよ。ともかく俺が来たからには呉に敵を侵入させないように頑張りましょ。」
伏犠は嬉しそうに。
「頼もしいのう。左近。頼りにしておるぞ。」
信玄も左近の尻をさわさわと撫でながら。
「わしも頼りにしておるぞ。左近ちゃん。」
左近は思いっきり信玄の胸を肘で突いて。
「だからっセクハラは禁止ですぜ。信玄公っ。」

女装したままの三成と共に与えられた幕へ戻ろうとして偽左近に左近は声をかけられた。
「左近さん。」
「勝猛さん。」
偽左近は左近に近づいて。
「本当に来てくれてありがとうございます。」
「何を今更…」
「俺は…ほっとしましたよ。島左近の名を背負わなくて済む。俺に取って左近さんは大きくて…とてもじゃないが届かない。」
左近は偽左近の肩に手をポンと置いて。
「でもここまで皆を引っ張って戦って来たのは勝猛さんでしょ。自信を持って下さいよ。これからも俺や皆を助けてくれませんかね。頼りにしてますよ。」
「そう言ってくれると…嬉しいですよ。俺は…」
「さぁ。久しぶりに伏犠さんに会ったんでしょ。うんと甘えて…ね?勝猛さん。」
偽左近は頷いて、伏犠の居る幕へ走って行ってしまった。
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