幸村×趙雲 お話

□赤い月6
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「湯治?」
趙雲はあれから幸村と共に真田の屋敷で暮らしていた。
牢から出して貰ったのだが、慶次が幸村を襲ったあの事件が心中穏やかではなくて…
しかし、今、慶次は兼続の所へ行っているらしく、姿を見せず。

そこへ幸村から趙雲へ湯治に行かないかと誘いがあったのだ。
幸村は爽やかな笑顔で。
「左近殿の具合が悪いからどうしたらよいかって、三成殿に相談されたのです。湯治が一番ではないかと勧めておいたのですが。日は明後日からです。私達も共に参りませんか?実は宿も取ってあるのです。窓から見える景色がいいんですよ。目の前が川で傍に滝があって。」
「私はかまわぬが…共に行って迷惑にならないだろうか。三成殿や左近殿に…」
「部屋は別に取ってあります。互いに夫婦らしい良い夜を過ごせたらいいではありませんか。」
「幸村殿がそこまで言うのなら、行こう。」
趙雲が承知すると幸村は趙雲を抱き締めて。
「ありがとうございます。ああ、今から楽しみです。さっそく三成殿に使いを送って知らせておきますね。」


そして湯治の日が来て、幸村は趙雲と共に馬に乗り三成と左近と約束の場所で合流した。
二人は戦装束で幸村は手に炎槍索戔鳴を持ち、趙雲も豪竜胆を持ち、何が起きても対応出来るように準備万端で。
三成達もそれは同様。戦装束に身を包み、それぞれの得物を持って馬に乗って。

幸村が三成に近づき声をかける。
「いい天気になって良かったです。三成殿。左近殿、元気良さそうじゃないですか。三成殿が心配していたんですよ。左近殿が具合が悪い。どうしたらよいだろうか?って。」
幸村の言葉に左近は三成の方を見つめ。
「それで、湯治って事になったんですか?」
幸村は爽やかに笑って。
「私が勧めました。疲れた身体を休めるのに湯治が一番。と…趙雲殿を連れていってあげたかったので三成殿も一緒にと誘ったのです。」
三成と左近に趙雲が馬から一旦下り、拱手して挨拶をする。
左近は趙雲に軽く頭を下げてから、三成と幸村に向かって。
「左近の為にありがたいですよ。殿…そして誘ってくれて感謝しますぜ。幸村。」
三成はフンと横を向いて。
「そろそろ行くぞ。でないと日が暮れてしまう。」
馬を進め始める。
再び馬に乗りながら、そんなやりとりを趙雲は微笑ましく思っていた。

皆で馬を進め、しばらく行くとうっそうとした木々に囲まれた山道を一行は進み。
嫌な予感、そして気配がする。何だかそんな気がして。
趙雲が辺りを見渡して幸村に。
「もう、三成殿の領土は出たのだろう。気をつけられよ。何やら気配が…伏兵を置くには丁度良い道では無いかと。」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに山賊であろうか。数十人の男達が道に躍り出て、4人を囲った。
手に刀や槍を持ち人相も悪い大男達である。

頭らしい男が前に進み出て4人を舐めるように見つめ。
「身分のある武将とお見受けした。金目の物、置いて行って貰おうか。それにしても野郎にしておくにゃもったいない美人さん達だ。そこのお侍さんよ。こいつらを俺たちに分けてくれネェか。ひん剥いてうんと可愛がってやるぜ。」

お侍さんと頭が言ったのは左近に向かってであって。
三成も幸村も趙雲も、それは又、そんじょそこらのおなごより綺麗な顔をしていたものだから。
周りの男達の中にはゴクリと喉を鳴らして、今にも飛びかからんばかりの殺気を見せており。
幸村は趙雲を庇うように前に出て炎槍索戔鳴を持ち、男達を睨み付ける。
趙雲はというと、舐めるように幸村を見つめる賊に気が気では無く、手に豪竜胆を持ち、連中を切って捨てたいそんな気持ちで。

左近は頭に向かって口調は冷静にしかし、殺気は凄まじく。
「嫌だね。俺の名は島左近。軍略家で石田家の家老だ。その首、跳ね飛ばしてやろうか?」
猛壬那刀を手に左近が馬上から殺気を放てば、頭が急に笑い出して。

「噂は聞いている。隣の領土の三成っていう殿は変態で島左近っていう男を嫁にしているとか。嫁の左近って侍は人参を銜えて喜んでいるとかなぁ。周りにいる3人さんの間違いじゃねぇのか?こんなムサイ野郎を可愛がっているようじゃ石田三成が変態の殿様だっていうのは本当らしいがな。」
左近は三成に向かって。
「殿っ。こんなとこまで噂が聞こえてますぜ。もう、どうしてくれるんです。」
「怒るな。左近。」
三成は平然とそう言うと、頭の前に馬で進み出て。
「俺がその変態の殿様、石田三成だ。ここを通さぬというのなら、力づくで通るまで。言っておくが、後ろに居るのは真田幸村、趙雲。どちらも聞いた事があろう?」

頭や部下達は幸村と趙雲の名を聞いた途端、青くなった。
幸村と趙雲の武勇は知られていたから。
そういえば、顔こそ綺麗だが、先程からただならぬ殺気を放っている二人である。
襲いかかろう物なら、確実に殺されるであろう。
「おそれいりやしたっ。野郎共、退散だ。」

皆、慌てて山の中へと逃げて行き姿を消した。

左近はため息をついた。
「はぁ…嫌ですな。幸村達の名を聞いたら逃げて行き、俺や殿は変態扱いですかい。
軍略家として遠呂智を倒す活躍を見せたはずなんですがね…」
幸村が慰めるように。
「いつか皆にも左近殿の強さが解って貰えますよ。」

幸村は左近を慰めてから、表情を曇らせフゥとため息をついて。
趙雲が心配そうに馬を近づけ。
「どうしたのだ?幸村殿。」
「私は…自分が嫌になったのです。」
「え?」
「舐めるように賊が貴方の姿を見ていた時に許せないと思いました。何があっても貴方を守ってみせると…でも…」

「男共に犯された趙雲を想像してしまった。違うか?幸村。」
三成の言葉に幸村は頷いて。
「私は最低です。趙雲殿の白い肌に…身体の奥にねじ込まれる汚れた男達の欲…それを思ったら興奮してしまって。」
趙雲は俯いて。
「宿で…抱いてくれないか…汚らわしい賊のように激しく私を…」
「趙雲殿…」
「そうする事でしか私は答えられないから…」

三成がニヤリと笑って。
「いい嫁を持って幸せだな。幸村。」
幸村が赤くなって。
「ええ。私は幸せものです。有り難いですよ。」
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