幸村×趙雲 お話

□赤い月13
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翌日、趙雲と幸村は太史慈に頼んで孫策に会いに行った。
孫策陣営の武将や文官達は皆、二人を見に孫策の屋敷に集まって来て。
趙雲と幸村は名の知れた有名人だったから。

孫策は周瑜、呂蒙、魯粛を始めとする20人位の配下を周りに従えて、中央の椅子に座っており太史慈に連れられて来た趙雲、幸村に会った。
「俺が孫策だ。光栄だな。長坂の英雄の趙子龍殿と、槍の名手、真田幸村殿に会えるとは。二人とも噂に違わぬべっぴんさんだなぁ。」

趙雲がまず口を開く。
「孫策殿。私達の用件というのは…」
孫策は頷いて。
「ゆっくりと建業を見物して行かれるといい。太史慈に案内させる。有名な二人に会えるとなると皆、喜ぶだろうしな。」
幸村が前に進み出て。
「左近殿に会わせて貰いたいのです。左近殿は大切な私達の友。どうしているのかその身を案じているのです。」
幸村の言葉に孫策は不機嫌に。
「左近は元気だ。会わせる訳にはいかねぇ。」
趙雲も前に進み出て。
「どうしてです?」

孫策は断言するように。
「左近は俺の妻だ。三成に様子を見てこいとでも言われたんだろう?伝えてくれ。帰す気はねぇとな。」
そう言い捨てると孫策は立ち上がり、部屋を出て行ってしまった。

他の武将や文官達も孫策に付き従い部屋を出て行ってしまい、広間に残された二人に太史慈が。
「都を案内しろと殿の仰せだ。気を落とされるな。待てば機会もあるだろう。」
趙雲が礼を述べる。
「ありがとうございます。ここは機を待つしかないか…」
幸村も頷いて。
「仕方がありません。左近殿の事は心配でたまりませんが…」


二人が太史慈に連れられて、建業の都の通りに出れば、たちどころに人だかりが出来たのには趙雲も幸村も驚いて。
「あれが、有名なあの趙雲様と真田幸村様ですって。」
「噂通りの綺麗な男っ。」
「ああ、もううっとりしちゃうわ。」

だなんて言う女性が群がるのは解るのだが、何故か男性も多く群がって居て。
「男にしておくにゃもったいない美人さんだ。」
「何でもあの二人、出来ているらしいぜ。」
「突っ込みてぇっ。あれだけの美人なら突っ込ませて欲しいっ。」

太史慈が二人に向かって。
「申し訳ござらぬ。周瑜殿の差し金みたいで。お二人を警戒しておられる。こうして注目を浴びていれば動きが取れないという事なのだろう。」
幸村が趙雲を守るように前に出て歩きながら。
「趙雲殿に何かあったら…しかし、武器を持つことは許されていないのは何と心許ない事か…」
孫策に会うに当たって武器の所持は許されていなかったのだ。
太史慈が自らの武器を持って二人を護衛しているだけで、やはり自らの得物が無いのは心許ないのは趙雲も幸村も同様で。

太史慈が二人を船着き場に案内する。二人を追いかけてきた人達も大勢着いてきて。
屋根の着いた小さな船が何艘も停まっている。
水遊びを楽しむための船なのだろう。
3人が乗り込んで船が出ようとしたその時であった。

一人の黒髪を結い上げ、桃色の衣を着た美女がその船に飛び乗ったのだ。
二人を追ってきた人達からどよめきが起きた。
その美女は勢い余って趙雲に抱きついたものだから、趙雲は慌ててその美女を引き離し。
「このような事をされては危険だ。さぁ船を戻すから下りなさい。」
そう言って改めてその美女の顔を見る。
傾国…きりりとしたその顔立ちは色白で何とも言えない色気を醸し出していて。
趙雲は思わず見とれてしまって。幸村が趙雲に向かって不機嫌に。
「趙雲殿はやはりおなごの方が良いのですか?」
趙雲は慌てて。
「いや…あまりにも美しい女性なので見とれてしまったのだ。」
太史慈もマジマジとその女性の顔を見つめ。
「これ程の美しき女性はなかなかおらぬ。名は何という。」

「お前ら、俺が解らんのか?なら、成功だな。」
幸村はその声を聞いてピンと来た。
「み、三成殿ですか?」
「ああ。俺だ。石田三成だ。」
幸村も三成の顔を見つめながら。
「見事に化けられましたな…この二人は見とれておりましたよ。」
「我ながら見事な出来すぎてな。お前は見とれないのか?幸村。」
「私は女性には興味はありません。私が興味あるのは趙雲殿だけです。」

船はゆっくりと河へ滑り出す。
三成の名を聞いて太史慈が。
「左近殿を連れ戻しに来たのか?」
「孫策の所の武将か…」
「太史慈。字は子義だ。俺も左近殿には同情している。」

三成は太史慈に向かって。
「だったら力を貸して欲しい。」
「殿を裏切る事になる。表だっては貸すことは出来ぬ。」

趙雲が三成に。
「どうやったら左近殿を助けられるか…機を待ちましょう。」
幸村も。
「今は警戒が強くて無理だと思います。私達も会わせて貰えませんでした。」
三成は俯いて。
「居てもたってもいられず、ここに来てしまったのだ。こうしている間にも左近は孫策に抱かれて…俺の妻なのに…」

趙雲も幸村も三成に向かってかける言葉を見付けることが出来ず。
三成が船を岸につけてくれというので、岸辺につけてやるとひらりと飛び降りて。
「何かあったら知らせてくれ。孫策の屋敷の近くに苑論亭という宿がある。そこに泊まっているんでな。」
幸村が。
「承知しました。三成殿、お気をつけて。」

三成は去っていった。
太史慈が。
「余程、左近殿を愛していると見える。女装までして来ようとは。」
幸村は頷いて。
「三成殿に取って左近殿は命より大切な人ですから。」

しばらく船に乗り、太史慈が案内する川辺の景色を楽しんで、船から下りれば太史慈は二人を川辺の南国風宿に案内した。
全て板張りで出来ており、窓を開ければ河が見えて。大きめの寝台が中央にあり、卓には果物が盛られていて。

「しばらくここに滞在して欲しい。明日は呉軍の若き兵達が貴殿達に会いたがっている。後、見張りを数人、外に置いて行くので何か不便があったらその兵に言って欲しい。」
太史慈の言葉に趙雲は。
「お気遣いありがとうございます。」
幸村も礼を述べる。
「何かありましたら、言うようにしますので。今日は色々とありがとうございました。」
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