長編小説 古志城(遠呂智×趙雲、清盛×左近)

□古志城A−5
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諸葛亮ら人質達が古志城を出て行ったその日は慌ただしかった。
戦況が混乱しているのか、情報を持って来る早馬もなかなか到着せず、日も暮れて夜になって。
趙雲が幸村と遠呂智の部屋の卓の前に座って、情報を待っていると、百々目鬼が駆け込んで来た。
「大変でございます。総大将。遠呂智様がご帰還されました。」
「何だって。遠呂智様が?」
「広間にっ。お急ぎ下さいっ。」
趙雲と幸村が慌てて広間に下りて見ると白銀の髪の血だらけの遠呂智が膝をついて俯いており、水鬼や他の兵達がおろおろしたように周りを囲んで居て。
「遠呂智様っ。」
趙雲が近づき膝を付き遠呂智を覗き込み。
「ひどい怪我ではありませんか。医術の心得のある者は居らぬか?急ぎ遠呂智様を部屋に運んで手当を。」
百々目鬼が近づいて。
「ここにはそのような者はおりませぬ。我ら魔にあるは生か死、怪我をしたとて自らの力で治す。それが遠呂智様の方針でしたので。血止めをし、華陀膏と薬草を飲ませて寝かせるが一番。失礼しますぞ。」
遠呂智の身体を片側から抱え上げて。
「総大将、もう片方を。私一人では運べませぬ。」
「解った。」
趙雲は百々目鬼と共に遠呂智を部屋へと運んで行った。その間、幸村は水鬼や他の兵達に落ち着くよう指示を出してから左近に知らせに行き。
部屋の寝台に遠呂智を寝かせ、趙雲は百々目鬼に手伝って貰い血を拭き取り華陀膏を塗った包帯を巻き、薬草を煎じて遠呂智の口から流し込んで。その間、遠呂智は一言も口をきかずされるがままになっていて。
夜着を羽織らせ遠呂智を寝かせた後、趙雲は百々目鬼に。
「手当を手伝ってくれて礼を言う。」
百々目鬼は首を振り。
「いえ。しかし遠呂智様は弱っておいでです。華陀膏が効くと良いのですが。私は引き続き早馬が来るか広間で待ってみますが、おそらくはもう、無理でしょう。」
「押し寄せてくると…蜀や呉軍、そして仙界の軍が…」
「様子を見に行かせましょう。こちらに向かう軍がどの辺まで来ているか。」
「任せるぞ。百々目鬼。」
趙雲は左近を呼びに自分も行こうと思ったが、幸村が呼びに行っているはずである。
こちらに来れない事情でもあるのだろう。
百々目鬼に任せるしかなかった。

遠呂智は吐き出す息も弱々しく苦しげで。
趙雲が心配そうに覗き込めば、遠呂智は瞼を開け、やっと口を開いた。
「全ては終わった…仙人に我は負け、付き従った者達は…」
遠呂智の手を握り締めて。
「亡くなったのですか…」
「慶次を失った。清盛も生きてはいまい。妲己と卑弥呼は捕まった。呉と蜀、徳川の裏切り。
ここにも奴らが押し寄せるであろう。」
「遠呂智様。私は…貴方を裏切ってしまいました。もうこの城に人質はおりませぬ。」
趙雲が辛そうに紡ぐ言葉に遠呂智はフっと笑って。
「かまわぬ。妲己や清盛が取れといったから人質を取ったまでだ。そんな者に頼ってまで生き延びようと勝とうとは思わぬ。趙雲。」
「何ですか?遠呂智様。」
「この城を開け渡すが良い。もうこの戦に意味は無い。我が死ねば残るは我や清盛が捕まえたお前や左近、幸村のみ。仙界の連中に訳を話せば罪も減じられるであろう。」
「百々目鬼や他の兵達はどうなります?」
「あれは我が連れてきた魔物。我が滅びると共に運命を共にするのが定め…お前が気に病む必要はない。」
趙雲は遠呂智の手を強く握り締めて。
「遠呂智様は死ぬおつもりなのですか?」
「我が傷は深い。呪われた生も終わりを告げる時が来た。謝らねばならぬ。お前にしてきた事全て…無理矢理お前を妃にした。劉備から引き離して遠呂智の妃という悪名をお前にきせてしまった。」
「私は…」
趙雲は涙を流して。
「幸せだったと…貴方の妃になれて幸せだったと思っております。後悔はありませぬ。」
「そう言ってくれるか…」
「貴方は私を愛してくれた。今までこんなに愛して貰った事は無かったんですよ。愛と言う物を知って子龍は幸せです。ああ…遠呂智様。鈴も心配して寄ってきましたよ。」
ニャァと子猫の鈴が首に鈴を可愛らしく鳴らしながら寝台に近づいて来た。
趙雲は鈴を抱き上げて遠呂智に見せれば、遠呂智は目を細めて。
「愛いものよ…心が温かくなる…」
遠呂智は震える手を伸ばし鈴に触れる。
そっとその身体を撫でた。
趙雲に向かって。
「趙雲…最後に頼みがある。お前の身体を抱かせてはくれぬか?」
「遠呂智様らしくありませぬ。そのように私に頼むとは…」
「我はお前の中で眠りたい。」
趙雲は頷いた。
「解りました。側に行きますので、お待ち頂けますか。」
趙雲は鈴を寝台の下に再び降ろすと、自分は白銀の鎧を纏っていた物を脱ぎ捨て、全裸になる。
涙がこぼれて止まらなかった。
寝台に上がると寝台を遮る布を閉めて外から見えないようにしてから、遠呂智の隣に潜り込んで。
「遠呂智様…」
そっと唇を近づけ遠呂智の唇に口づけをする。
遠呂智はいきなり趙雲の腿をぐっと掴むとそのまま趙雲の上にのしかかり、乱暴に足を開いて自らの一物を秘められた蕾に押し当ててきた。
趙雲は遠呂智の顔をまっすぐ見つめて。
「そのまま挿れて下さいませんか…」
「今日は我が儘は言わぬのか…」
「慣らすだけの時も無いでしょう。」
グっと力を込めて一気に趙雲の蕾を貫けば、趙雲は悲鳴を上げて。
「ああっ…熱い。遠呂智様…ハァハァ。このまま動いて…私の中を掻き混ぜて下さいっ。」
「解っておるわ。」
遠呂智は激しく趙雲の身体を揺さぶり動き始めた。
ズチュっグチュっと卑猥な音をさせ、その巨大な一物を趙雲の中で擦り上げ、ぐっと腰を引くといきなり深々と腰を叩き付け限界まで深く貫いて。
それでも足りないとばかり遠呂智は趙雲の奥をこじ開けるように腰を叩き付け、激しく一物を動かせば趙雲は快楽に自らの一物を勃たせ震わせ先走りの蜜を滲ませるもそれを上回る痛みに涙を流し、苦しげに喘いで。
「ああ、ハァっ…遠呂智様っ。痛っ…んっ…」
「苦しいか…もうすぐ終わる…」
「嫌ですっ…ああっ。終わらないで…終わったら貴方は…」
止めとばかりにズチュっと深々と遠呂智が串刺しにするように趙雲を貫いて熱い液をたっぷりと注ぎ込みながら、まっすぐに趙雲の顔を見つめ囁いた。
「幸せだったぞ…我が妃…ちょう…うん…」
趙雲は身体の奥に熱さを感じながら身を震わせて自らの一物からも蜜を吐き出して。
ふと顔にかかる温かい液に瞼をあければ遠呂智から涙がこぼれて自分の頬を濡らしており。
「私も…幸せでした。遠呂智様。」
「さらば…」
どさっ。
趙雲の身体に一気に遠呂智の重みかかかる。
趙雲は慌てて遠呂智の身体を揺さぶって。
「遠呂智様っ。遠呂智様…」
繋がったまま共に横向きに遠呂智を転がせば遠呂智は瞼を瞑り安らかに眠っているようで。
ただもう息はしておらず、いくら趙雲が呼びかけても瞼を開ける事は無くて…


「眠られたのですね。」
趙雲は涙を流しながらぽつりと呟く。

遠呂智を優しく抱き締めて。
「ずっと私が抱いていてあげますから、一緒に眠りましょう。」


趙雲は一晩中遠呂智を抱き締めていた。その身体が熱を失って冷たくなって行っても。
優しく抱き締めてその髪を撫でて、そして静かに呟いた。

− 愛していますよ。遠呂智様。もうすぐ貴方のお側に参りますから。
ですから少し待って居てくれませんか…最後の戦をしてまいります。
私が総大将として立派な最期を遂げられるように見守っていて下さい。
ああ、でも貴方と共に静かに暮らしたかった。生きてこの世で暮らしたかった…
遠呂智様…  −


涙が止めようも無く溢れ出る。

最後の戦の前の静かな夜の出来事であった。
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