諸葛亮×趙雲 お話

□青き龍3
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成都に帰ってきた趙雲。
しかし、そこでの趙雲はほとんど、寝込むような生活を送っていた。

諸葛亮は趙雲の身体が良くなると、その身体を貪るように趙雲を抱いて。
遠呂智を倒した後、群雄達の小競り合いは続けども、世は平和になったのだ。
この身はもうどうなってもかまわない…
自分に与えられた屋敷で趙雲はそう思いながら白の夜着のまま寝台の上に身を横たえていた。

「幸村殿に会いたい…」

遠呂智を倒すために、共に行動した幸村。彼の事が妙に懐かしい。
しかし、自分に想いを寄せる幸村にそっけない態度を取ってしまったのだ。
そう…自分は諸葛亮の物だから。

その時である。部屋の扉が開いて、諸葛亮が入って来た。
「薬酒をお持ちしました。」
「諸葛亮殿。」

こぶりの瓶に入った赤い液体を小さな杯に注ぐと、寝台で身を横たえている趙雲に向かって。
「起きられますか?」
「ええ。」
かろうじて身を起こし差し出される杯を手に取り、喉に流し込む。
胃が焼けるに熱くなって、身体がぽかぽかと温かくなる。

諸葛亮は微笑んで。
「良く効くでしょう…」
「汗が出てまいりました。」
「幸村殿に会いたいですか?」

趙雲は目を見開いた。
自分が呟いた独り言が聞こえてしまった?

「懐かしく感じて…幸村は私に取って弟のような…ほってはおけない存在だったのです。」
「会うことは出来ませんが、見ることは出来ますよ。」

そう言うと銀で細工の施してある手鏡を懐から出し趙雲の手に渡して。
趙雲は受け取ると鏡を覗き込んだ。
自分の顔が映っている。幾分やつれた自分の顔が。

諸葛亮は趙雲に向かって。
「念じれば良いのです。そうすれば幸村殿が今、何をしているのかが見えますよ。」
「念じれば見えるのですね。」

趙雲は心に念じて鏡を覗き込んだ。
幸村が見える…見えてくる。
しかしその幸村は…

畳の上で逞しい男に組み敷かれていた。
同意の上ではないのであろう。
両手首を拘束されて。
無理矢理足を開かれ激しく男が腰を振るたびに幸村は苦しげに涙を流している。

あの金髪は…あの後ろ姿は…

「前田慶次殿?」
震えながら呟く趙雲に向かって諸葛亮は。
「そうですね。遠呂智の所に居た前田慶次殿…」
「助けねば。幸村殿を助けに行かなければ…」
寝台から降りようとする趙雲を手で制して諸葛亮は感情を感じさせない声で。
「無駄でしょう。ここから幸村殿の居る所まで相当距離があります。たどり着く頃には全てが終わっているでしょうね。」
「でも、このままでいいはずがないっ。傷ついた幸村殿を助けて支えてあげなくては。」

「許しませんよ。」

「諸葛亮殿…」

諸葛亮は趙雲から手鏡を取り上げるとそれを懐にしまって。
「あれだけ抱いて差し上げたのに、まだ幸村殿を想っているのですか?私から逃げる事なんて許さない。」
「妬いておられたのですか?だから…蜀に戻ってきてから…私が身体が良くなる度にあれだけ激しい交わりを…」


趙雲は寝台から身を乗り出し諸葛亮の背に手を回して抱き締めた。

「私が好きなのは諸葛亮殿なのです。何をされても…例えこの命を落とす事になろうとも…」
「私は化け物なのですよ…」
辛そうに言う諸葛亮に。
「それでもいいって…遠い昔に言いましたよ。私は…」

「でも…幸村殿をほってはおけないのでしょう…」

趙雲から身を離す諸葛亮。
趙雲はきっぱりと諸葛亮に向かって。
「幸村殿は大切な友ですから…」
そう言うと趙雲はふらふらと寝台から降りて。
「私は幸村殿の所へ行きます。」

ぐっと諸葛亮は趙雲の手首を掴んだ。乱暴に寝台にその身を押し倒す。

「離して下されっ。」

バシっと趙雲の頬を諸葛亮は殴った。

夜着を強引にはだければ、趙雲は大人しくなって。

諸葛亮は趙雲を押さえつけながら。
「貴方は私だけを見つめていれば良いのです。」

趙雲は涙を流して。
「貴方の事が好きなのに…どうして信じて貰えないのです。幸村殿を気遣うのは友への気持ち…私に人としての心を捨てろとおっしゃるのか…」

諸葛亮は趙雲に向かって。
「そこまで言うのなら、幸村殿の下へ参りましょう。貴方が誰の物であるのか幸村殿にも見せつけて差し上げなくては…」
「私が好きなのは貴方なんですよ。諸葛亮殿…」


趙雲は両手を伸ばして諸葛亮の頬を包み込み、唇を近づけてその唇に口づけを落とす。
諸葛亮はそれを目を細めて受け止め、唇を離すと趙雲に向かって。

「自信が無いのですよ…自分に自信が…」

「貴方は丞相にまで上り詰められた。我が殿、劉備殿にも一番信頼されていると言うのに?」

「それでも、人でないことには変わりはありませんから…」

趙雲は諸葛亮を強く抱き締めた。

外はこれからの波乱を予感するかのように、成都には珍しい強い雨が降ってきたのであった。

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