幸村×趙雲 お話

□赤い月10
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翌日の夜である。
幸村の兄の信幸が訪ねてきた。幸村は兄を客間に通せば、信幸は不機嫌そうに。
「くのいちから詳細は聞いた。籠もって暮らすとはどういう事だ?父上も心配している。お前をたぶらかす趙雲とかいう男のせいならば、この信幸、その男を斬って捨てる所存だが。」
幸村は兄を睨み付け。
「趙雲殿を斬るというのなら私がお相手致します。籠もって暮らす事にしたのですよ。なんせ、この世はぶっそうだ。私の愛しい趙雲殿に何があるか解らぬでしょう?」
「一生籠もって暮らす訳には行くまい。」
「二年位ですよ。二年もあれば、私をつけねらう輩も諦めるでしょうし、趙雲殿に私という男を深く刻むことも出来る。邪魔をすると言うのなら兄上とて容赦しませんよ。」

信幸は首を振って。
「お前が狂ってしまっているというのは本当だったのだな。真田家としてなんらかの処置を考えねばなるまい。」
「兄上っ。」

幸村が立ち上がる。
周りを見渡すと家臣達が槍を構え、幸村を見つめていて。
くのいちが幸村の前に進み出て。

「申し訳ないにゃん。幸村様。幸村様の為にこうしちゃいましたー。」
「くのいち…私は狂っているのか?ただ、趙雲殿と共に暮らしたい…誰にも渡したくない。だから牢に閉じこめて自分も閉じこもりたかったのに…」

幸村を信幸は縛り上げると、趙雲の入っている座敷牢へと向かう。
趙雲を見付けると、鍵を開けて外に出し。
「私は幸村の兄、信幸と申す。我が弟の事は今日限り忘れてもらいたい。蜀から迎えが来ている。この屋敷から出て蜀に戻って頂きたい。」
「私は幸村殿の妻なのだ。蜀に戻る気は無い。」
「しかし、このままでは弟は駄目になる。貴殿とて解っているであろう?」

趙雲は走り出した。座敷に飛び込めば幸村が縛られて座らされており。
「幸村殿っ。」
幸村は顔を上げて。
「私は間違っていたのですか?貴方の傍に居たい。離れたくない。」
「間違って等いない。私とて想いは同じだ。幸村殿っ。」


趙雲は奥の部屋に走った。
自らの武器、豪竜胆を手に取ると幸村を立たせて歩き出し、周りの家臣を睨み付け。

「道を空けるがいい。趙子龍の槍の餌食になりたくなければ。真田幸村は私の大切な人だ。私が貰い受ける。」

信幸は家臣達を制して。
「怪我をする。趙雲は一流の使い手だ。趙雲殿。逃げ切れる物ではないぞ。真田はありとあらゆる手を使って幸村を取り戻す。」

趙雲は幸村を連れて外に飛び出た。口笛を吹けば馬が走ってきて。
幸村の縄を斬って馬に乗せると自分も飛び乗り、外へと駆け出す。

幸村を自分の背に掴まらせながら、趙雲は叫んだ。
「閉じこもってはいられぬようだ。この趙子龍、幸村殿を守って見せる。だから私についてきてくれぬだろうか?」
「趙雲殿。私が貴方の夫なのです。立場が逆転してしまったようで。貴方が傍にいて下さると言うのなら、二人でどこまでも逃げましょう。好きです。私の趙雲殿。」
後ろから抱き締めてくる幸村の温もりを幸せに感じる趙雲。



月の明かりが二人を照らして…

しかしこれから二人の行く手には何が待ち受けているのであろうか?
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