Fly Away!
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心臓が止まるかと思った。
「……ぎ、ん」
「あ、あんたもしかして坂田さんの知り合い!?ちょ、こっち来て手伝って!」
「…何、してんの」
「いきなり上から降ってきたんだよ!坂田さんとこのハムの子が重傷なんだ!」
「死んで、る?」
「死んでないけどヤバい状態だ!早く医者に連れてかないと!」
「………大丈夫なの?」
「え?…あァ、俺の知り合いの医者だけど、そいつなら何か裏事情があっても匿ってくれるから安心してくれ。…っていいから早く行くぞ!俺が坂田さん背負うからあんたはハムの子背負って」
「わ、わかった……ってビクともしねェんだけどこのハムの子!重!」
「仕方無ぇな…じゃあ俺がハムの子を…………って重!」
江戸に移住してきてから散策を結構したお陰か、大分この街にも慣れてきたと思う。江戸の中心街やかぶき町は、かなり詳しいと思う。ただ、裏町の方はまだ散策していないので、全く詳しくない。
表を制すには、まず裏を。世を渡るには裏事情にも詳しくないとやっていけない、と言うのが私の持論。
そんな感じでぶらぶらと裏町散策していれば、いきなり何処からかガラスが割れた音。その後にドスンやら何やら重たいものが落ちた音がした。気になって音がした方へと移動してみたところ、見慣れた天パが血塗れで倒れていた。さすがの私も驚くっつーの。
正規の医者に連れて行くのはめんどそうだし、このオッサンの言う医者に連れてっても問題はなさそうだ。銀時の知り合いであればそれなりに裏事情も知ってそうだし。いや、勘だけど。
そんな感じで天パとハムを連れて行ったらヅラが居た。どうやらこのオッサンはヅラの部下だったらしい。うん、ヅラはめんどいけど、こいつなら大丈夫だ。オッサン、ナイス人選。
「あんた桂さんの知り合いだったのか」
「うん…オッサン、」
「何だ?」
「あの馬鹿を助けてくれてありがとう」
「…あぁ」
こちらこそ手伝ってくれてありがとう、とオッサンが右手を差し出してきた。このオッサンが居なかったら銀時は助からなかったかもしれない。ありがとう。お互い笑顔で握手を交わした。くそ、ヅラのくせに良い部下持ってるじゃねェか。
オッサンと別れてヅラの所に行けば、何か怒られた。女が危ない事をするな!って……ちょっと待て、私は場面に出会しただけで何もしていないぞ。むしろ人命救助したんだから誉めてほしい位だ。グチグチ言ってるヅラにイラッときたから一発殴っておいた。そしたらそんな子に育てた覚えはないわ!とかオカン面してきやがったからもう一発殴っておいた。
取り敢えず、銀時はオッサンが言ってた医者(その人もヅラの部下だった)に手当てしてもらって一命は取り留めた。今は包帯だらけになって布団で寝ている。そもそも何でこんな事になったんだか。女と一緒に倒れてたからもしかして男女のいざこざか!?とか考えたけどハムだし。だってハムだし。別に銀時が誰と付き合おうがどーでもいいが、何となく幼なじみとしてはハムとは付き合ってほしくない。出来れば人間でお願いします。
と、まァそれはさて置き。本当に何でこんな大怪我をするに至ったかだ。万事屋の仕事にしたって、あまり良い仕事内容ではないことは確かだろう。何かヤバい臭いがそこら中からプンプンしてくるもの。
「お前は知っているのか」
「あ?何が?」
「コレだ」
いきなりヅラに話し掛けられたが、全く以て意味が解らない。主語を入れろ、主語を。ヅラが主語を入れる代わりに懐から取り出したものは、何やらビニールに包まれている白い粉。一体コレが何だと言うのか。目線で訴えてみれば、矢鱈と細かく説明してくれた。
転生郷。最近巷の若者の間で流行っているらしい。嗅いだだけで強い幻覚が見れる。まァ所謂麻薬だ。厄介な事に依存性が高いとのこと。全く最近の若者はアホばっかだ。
銀時と一緒に落ちていたあのハム女も、やっていたらしい。しかもかなりやられてるって。一生廃人の可能性もあるとかないとか。自業自得だ。
そしてその転生郷を売りさばいてるのが宇宙海賊春雨。………そう言えば最近春雨食べてないな。よし、今日の夕飯はマーボー春雨にしよう。
「で、何でヅラはそんなに詳しいの」
「ヅラじゃない桂だ。こんなもの、俺の思想に反する。黙って見ている訳にはいかないからな」
「ふぅん」
どうやらヅラはご立腹らしい。まァ確かにこんな非人道的なものは私も認めない。ヅラみたいにお堅い人間には、尚更腹が立つ代物だろう。だって今にも殴り込みいきそうな勢いだよこいつ。