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「オイ」

「何」

「アドレス教え「嫌だ」何でだァァア!」


あれからと言うもの、坂田は矢鱈と私のアドレスを聞いてくる。別に坂田が嫌いという訳ではないが、なんとなく断っている。私の中の何かが減りそうな気がする。

今日も今日とて断ると、坂田は机にうなだれた。いつも同じ反応なので気にはしてないが、隣の席からジメジメした空気が流れてくるのはウザい。

のそっと効果音でもつきそうな感じに起き上がった坂田。だるそうに私に顔を向けてくる。その目は相変わらず死んでいる。


「そんなに俺が嫌いなのか」

「いや別に」

「じゃあ「教えない」何でだァァア!」


再度机にうなだれた坂田。何こいつ面倒臭い。坂田って何事にも無気力だったイメージなんだけど、何故私のアドレス一つにここまで執着するのか。

坂田と私はそこまで仲が良い訳ではない。ただのクラスメートで、ただ席が隣なだけ。席が隣なだけあって、話したりはするが、深い話をする事はない。きっとこの薄い関係も、席が離れれば全く無くなるのだろう。

今は昼休み中で、ご飯も食べ終わりまったりしてる最中だ。坂田の周りにも馴染みの連中がわらわらと集まっている。その中で坂田の前に座ってずっとゲームをしている眼帯野郎。学校来てまでモンハンすんな。

私だってやりたいの我慢してるのに……そう言えば昨日こいつに攻略方法聞いたらシカトされたんだった。眼帯のくせに生意気な。


「高杉」

「あ?」

「あんた昨日私のメール無視しただろ」

「ググれカス」

「うっわウザ」

「…………」


良心の欠片もない高杉に苛つきを感じていると、横から視線を感じた。横を向いて確認すれば、坂田が机から顔を上げて私と高杉を交互に見やっていた。信じられないといった顔をしている。何だこいつ。


「え、ちょ、高杉もしかしてこいつのアドレス知ってんの?」

「あァ」

「え、ちょ、何で!?いつから!?」

「うるせェ」

「ちょ、俺ともアドレス交か「断る」だから何でだァァア!!」


高杉とアドレス交換したのはいつだったか。かなり前だった気がする。確か高杉がモンハンをやってて、それを見て私が話し掛けたのがきっかけだ。メールをしても、大体モンハン談義で終わるけど。

まさか高杉と既にアドレス交換をしているとは思っていなかったんだろう。先程からずっとうなだれたままの坂田。またジメジメした空気が流れてくる。ウザい。


「…よし、それでは俺が銀時の代わりにアドレス交換をしようではないか」

「意味わかんないんだけど。何で俺の代わりにヅラがアドレス交換する訳?」

「ヅラじゃない桂だ!さぁ、アドレス交か「絶対嫌だ」何でだァァア!」


坂田の言う通り、全く関係のない桂と何でアドレス交換をしなければいけないのか。桂はメールするとしつこそう、と言うより心底くだらないメールを送ってきそうだから嫌だ。

断れば、先程の坂田と同じように机にうなだれた桂。坂田は爆笑している。ざまぁみろ、ってお前も同じ立場なのを忘れたか。


「何でそんなにアドレス交換したくないんが?」

「なんとなく」

「わしとは交換したくせにのう」

「だってあんたのは知ってた方が便利でしょ、同じ委員なんだし」

「それもそうじゃき」


アッハッハと馬鹿みたいに笑う坂本。いや、みたいじゃない。こいつは馬鹿だ。

坂本とそんなやり取りをしていたら、また横から視線を感じる。横を向けば坂田が私と坂本を交互に見ていた。何かデジャヴ。


「まさかテメェまでアドレス交換済みかよ!?」

「同じ委員会だからじゃき」

「テメ、俺と委員会変われ!」

「それは無理な相談じゃあ」

「例え委員会が同じでも坂田とはアドレス交換しないけどね」

「何でだァァア!!!」


また机にうなだれた坂田。このやり取りも本日五回目だ。もうデジャヴどころの話じゃない。





面倒臭いのは勘弁

(ぜってー諦めねェかんな)




 

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