log

□100,000
1ページ/1ページ


「よし、俺が一位になったらお前のアドレス教えろ」

「途中で転けちまえ」

「そんなに俺が嫌いか」

「つーかそろそろ諦めろよ」


何かと言うとアドレス教えろだ携帯寄越せだ、いい加減鬱陶しい。

そんないつものやり取りをしていたが、今日は体育祭だ。体力馬鹿共が活躍出来る日。そして坂田もその一人。やる気はないくせに運動は矢鱈と出来る。他の連中もあのやる気ない顔に負けるのは相当屈辱だろうて。

ちなみに私達のクラスは赤組だ。うちのクラスは体力馬鹿が多いから、何気に期待出来る。まァ主力の一人の高杉にやる気が無いのがアレだけど。


「オイ、一位取ったぞ!見てたか!?」

「いや」

「俺ら一応同じクラス!取り敢えずほら、約束のアドレス」

「つーか約束してないし」


ぐぬぁぁなんて奇声を発する馬鹿は無視をして、得点ボードを見る。僅差ではあるが、今の所赤組が買っている。このまま順当に行けば優勝も狙えそうだ。

私もやる気はないが、負けるのは嫌いだ。なので出来るなら優勝したい。体力馬鹿と同じクラスで良かった。

借り物競争に参加する人は集まってください

椅子にだらんと座っていたら、聞こえてきた放送。借り物競争は私も参加する競技だ。重い腰を上げ、同じく借り物競争に参加する友達と召集場所に向かう。後ろから負けんじゃねーぞ!と大声を出してくる馬鹿なんて知ったこっちゃない。


「坂田君、あんたにゾッコンだね」

「表現古いなオイ」


ゾッコンなんて久々に聞いたわ。ニヤニヤしながら私の顔を覗いてくる友達にちょっとイラッとした。


「アドレス位教えてあげれば良いのに。減るもんじゃないし」

「いや、減る。私の中の何かが減る」


友達も呆れながら言っているが、私も呆れたい。つーかアレはもう後に引けなくなってきてるんじゃないかと思う。ここまで来てアドレスはもういい、なんて言う性格じゃないだろう。…まァ、それは私も同じなんだけど。

次々と前に並んでる走者がスタートをきっている。借り物競争って一回に時間がかかるから、人数が少ない。友達と話してれば時間はあっという間に過ぎ、次は私の番。


「位置についてー、よーい」

パンッ!!


ピストルが鳴り一斉に走り出す。これでも足は速い方だ、借り物が書かれた紙までたどり着いたのは私が最初。紙を開いて中を確認する。閉じる。

…なんか物凄く嫌な文字が並んでた気がする。もう一度開いて確認する。

“銀髪で天然パーマで死んだ魚のような目をしてる人”

何この人物特定しまくってる内容。学内、むしろ全国探したってこんな奴一人しか居ないだろう。

あいつに頼むのは腑に落ちない。でも他の走者は既に借り物を探しに行ってしまっている。うちのクラスを見てみれば、何止まってんだ早くしろ!だとか全員で野次を飛ばしている。オイコラ、少しは優しくしろ。

……もう一度言おう。私は負けるのが嫌いだ。


「何してんだ!早くしやがれ!」

「借り物がわからないのか!?」

「ん」


野次を飛ばしているクラスメート達に近付いて、紙を皆に見えるように見せる。途端に静かに内容を読むクラスメートが少し可笑しかった。

するといきなり坂田が場内に入ってきて私の手を取って走り出した。クラスメート達は後ろでヒューヒュー!だなんて冷やかしている。

私も足が速いって言ったって男女の差はもちろんある。坂田も足が速いから、私は思い切り転けた。しかし転けたけど痛くなかった。坂田にすんでのところで抱きかかえられたからだ。

坂田はそのまま私をお姫様抱っこしてゴールまで一直線。周りが異様にうるさい。体育祭のうるささではない、何か別のうるささだ。


『おおっと!赤組これはまさかのカップル誕生か!?銀髪の王子様、姫を抱えて堂々一位のゴールです!』


坂田にも放送係にも言ってやりたいことが山ほどあるが、恥ずかしいし色々と驚き過ぎて声が出ない。

坂田の顔がいつもより近くにあって、息切れしてる坂田に少しドキッとした。そんな自分が余計恥ずかしく思えた。








萌えよ体育祭

(やべぇ、柔らけぇ)




 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ