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「か、かっちゃん、まっ、まって!」
「おせーんだよ!はやくこい!」
「かっちゃん、が、はやいの!」

幼い頃の私は、幼馴染のかっちゃんと一緒にいようと必死で、いつも周りをうろちょろしていた。かっちゃんもそんな私を置いていくことはせずに待っていてくれるものだから、私も嬉しくて尚更一緒にいようと頑張っていた。

かっちゃんは器用な子で、大概のことは出来ていた。爆破なんてこれまた派手で格好良い個性なもんだから、小さい子達からしたらかっちゃんは凄い!な状態で、かっちゃんは常に中心に居るような子だった。そんなかっちゃんは私にとってヒーローのようだった。

かっちゃんの幼馴染で、出久くんという男の子がいた。かっちゃん繋がりでよく一緒に遊んでいたけれど、出久くんが無個性だとわかってからはかっちゃんの当たりがキツくなっていって、一緒に遊ぶ、ということは少なくなった。私としては出久くんとも仲良くしたかったけど、あの時の私はかっちゃんが中心だった。今思うと本当に酷いことをしてしまった。いつか会えたら謝りたいなぁ。

「千晴の個性って何なんだ?」
「えっとね、ケガしてもすぐ治る!」
「それただ治るの早えだけだろ」
「ホントにすぐ治るんだよ!それに誰かのケガも治せるんだからね!」
「へー!千晴のくせに使えるな!」
「へへー」

私の個性は“治癒”だった。自分の傷は勿論、他人の傷も治せる個性。傷を負ったところに手を翳すとアラ不思議、キレイな肌に元通り。他人のを治す時も同じ要領だ。

子供なんて転んだりしてすぐ怪我をするから、そんな時は私が出て行って怪我を治すことが頻繁にあった。治す度に友達からは感謝されるし、大人からは偉い、とか凄い、とか褒められてとても嬉しかった。だから個性を使った後にくる倦怠感なんて当時の私は何も感じていなかった。なんか疲れたなー、って位にしか思っていなかった。

「かっちゃ、やだ、なんで、」
「ぃでぇ…っ、」
「ち、血が、」

あれは小学三年の時だっただろうか。昼間だったにも関わらず、商店街にあるお店で泥酔した男が個性を暴発させてその建物を壊す、という事件があった。しかもその時タイミング悪く、私とかっちゃんは二人でそのお店の前を通って遊びに行く途中だった。

瓦礫が真上から落ちてきて、あっ死んだ、なんて思っていたら横から強い衝撃があって私は隣の建物の壁に打ち付けられた。何が起こったのか理解が出来ず、元居た場所を見ればかっちゃんが瓦礫の下敷きになっているのが見えた。かっちゃんは私を助ける為に私を飛ばしたんだと瞬時に理解した。

駆け寄って瓦礫を退かそうとしたが、一人ではとてもじゃないけど無理で、周りに居た人達に叫ぶようにお願いをして一緒に退かした。手伝ってくれた人達はかっちゃんを助けだしたらすぐに他にも下敷きになった人を助けにいってしまった。周囲が慌ただしく動いて騒いでいる中、私は頭から血を流し、足も変な方向を向いているかっちゃんを抱えて、ただひたすらこの怪我を治そうと躍起になっていた。

その日の記憶はそこまでで、次に見た景色は病院の天井だった。

訳がわからず、とりあえず周りを確認しようと顔を横に向けたらかっちゃんが居た。特に怪我をしたような様子も無く、あぁ、あれは夢だったんだ、とひどく安心した。

「かっちゃんだぁ」
「………」
「イヤな夢見ちゃった」
「………」
「かっちゃんが怪我してボロボロなの。笑っちゃうでしょ」
「………」
「て、あれ?身体動かない、?」

手を動かそうとしても動かせず、身体を起こそうと力を入れても全く力が入らなかった。不思議に思いかっちゃんを見ると眉間に皺を寄せて辛そうな顔をしていた。

それもまた不思議で、何でかっちゃんがそんなに辛そうなのかが全然わからなかった。

「かっちゃ、」
「てめェは俺に守られてればいいんだよ」
「へ?」
「俺の知らねえとこで勝手に怪我すんじゃねえ、勝手に個性使うんじゃねえ」
「え?そんなのムリ、」
「ムリでも何でもするんだよ!言うことききやがれクソが!!」
「えぇー…」
















「懐かしい夢…」

私が入院をした時にかっちゃんに一方的に取り付けられた約束。その約束を私は律儀に守っている。さすがに怪我をしないのは無理だったけど、怪我をしても個性は使っていない。人の怪我も治していない。

かっちゃんと離れた今も、私の中心に居る人は変わっていない。

「かっちゃん元気かなぁ」

今日は高校の入学式。さっさと起きて準備しないと。









思い出

(久し振りに会いたいなぁ)




 

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